第34話 花梨の能力①

「菜々芽ちゃんとの再会を邪魔するなんて、誰であろうと許さない……!」


 花梨が背景に「ゴゴゴゴゴ……」という擬音が出そうな勢いで、あばずれザルをにらみつけていた。

 あ、あれはいつも俺に向けてくるのと同じ表情だ。……同情しちゃうぜ。


 花梨はポケットから手袋を取り出すと、右手にはめる。

 革製の指ぬきグローブだ。おおう、中二病っぽくてカッコいいじゃねーか。

 そしてその場にしゃがみこんだ花梨は、地面に右手を当てた。


「あたしの技に堕ちなさい。――アースクエイクっ!!」


 花梨が地面を撫でると、周囲一帯に地震が発生する。

 まともに立ってられないほどの揺れ。これ、震度6行くんじゃないのか!?


 うわ、うわわわわっ! 俺は慌ててその場にしゃがみこむ。

 菜々芽は花梨に抱きついていた。シェリルは落ち着いて伏せている。

 あばずれザルは何もできずにアウアウ言っていた。

 そして足下に地割れが発生すると、あばすれザルはひゅーっと落ちてしまう。


【あばずれザルに210のダメージ! あばずれザルをたおした!】


 おお……! シェリルより高いダメージを叩き出しやがった!

 マジかよ。武闘家ってこんなにも強いのか……!?

 揺れはすぐにおさまり、みんなが立ち上がった。


「すげーな花梨。まさか拳で地震を起こせるなんて……」


「ああ、さすがだ。惚れ惚れするほどの巧みな手業だったな」


「手業? あれって魔法じゃないのか?」


 シェリルの言葉に、俺は違和感を覚えた。

 魔法に対しての褒め言葉に巧みな手業なんて使うだろうか。


「あれはなアラタ、大地をイカせたのだ」


「…………は?」


 あれ? 今イカせた……って?

 俺、何か聞き間違えたんだろうか。


「花梨が大地の性感帯を的確に突いて、ビクンビクンさせたのだ」


「聞き間違いじゃなかった! しかも詳細に説明された!」


「ふふふっ、今ごろ大地は悔しがっているだろうな」


「大地はドMなの!? 俺たち今も踏みしめてるけど平気なの!?」


「ちなみに鼻血を噴出すると噴火になり、潮を吹くと洪水になるという」


「もしかして、俺たちの世界の地震もそうだったりするのか……?」


 もしそうなら、地球には我慢してほしいものである。

 いや、壊滅するとわかっていても我慢できないのだとしたら……。

 これは薄い本にもってこいな設定じゃねーか。ごくり。




【攻撃スキル:アースクエ「イク」 地(痴)属性

 母なる大地を感じさせることで地震を起こすスキル。この星は地球ではないが、アースには大地という意味もあるためセーフだ】

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