第23話 いざ出発!

「ところで街って、ここからどれくらいかかるんだ?」


「歩いて30分というところだな。ここからなら余裕で日帰りできるぞ」


「え、そんなんで行けるの? 外見たら一面草原なんだけど」


「ああ、この窓とは逆向きにあるんだ。見てみるといい」


 俺たちは家の外に出ると、そっちを見てみた。

 おー、確かに近くに街が見えるぞ。

 でもこんな近いんじゃ、イベントは起きないかもなあ。


「アラタ、この辺の敵はそれほど強くはない。腕試しに倒しながら行ってみよう」


「ああ、そうだな」


「お兄ちゃん、あたしも街に行ってみたい!」


「ダメだ、モンスターがいるんだぞ。菜々芽は危ないから留守番してろ」


「えー、あたしだって魔法が使えるんでしょ? 一緒に戦いたいよお!」


 いやまあ、そうなんだけどさ。だから危ないんだよ。

 菜々芽の魔法は無差別なんだし。……いや、ちょっと待てよ。

 一緒に連れて行って、菜々芽にヘンなこと言わせないようにした方がいいのか?

 二重意図ダブルミーニング使いそうになったら、俺が口をふさぐとかして。


 留守番させてる間に独り言で何か言われたら、それこそ対処しようがないぞ?


「……仕方ないな、菜々芽。一緒に行くか」


「わあい、やったー! お兄ちゃんと一緒にイケ――むぐっ!」


 俺は菜々芽の口をふさいだ。二重意図ダブルミーニングは発動しない。

 よーしよしよし、よしよし! これでとりあえずは安心だ。


「ではアラタ、ナナメ。さっそく出発だ。朝の旅立ち――すなわち朝勃ちだな!」


「いやだから、今は昼だってば」


「お兄ちゃん、朝だ――むぐっ、って何?」


「セーフ! 朝だちっていうのはな、えっと……そう! 夕方の雨を夕立って言うだろ? あれの朝バージョンってことだ」


「さすがお兄ちゃん! もの知りさんだね!」


 どっかああああああああああああん!

 いきなり爆発が起こって、家の外にあった俺の自転車がフッ飛んだ。

 うわあああっ、俺のハヤテ号がああああああっ!


 え……、何で……!?

 ってもしや、今のは「もの尻」ってことか!?

 そんなんで発動するの!?


「さあアラタ、テントの準備はできているか?」


「だいじょうぶだ、問題ない――じゃなくて!! 人の股間見ながらテント言うんじゃねー! 今は大きくしてねーし、それに日帰りには必要ねーだろ!」



 こうして俺たちは、街までの冒険に出発した。

 しかし……こんなんでこの先、だいじょうぶなんだろうか。

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