第22話 兄ゆえに
ひと通り確認を終えた俺は、バイブのスイッチを切った。
モーター音がやみ、さきっぽから出ていた白い光の刃が消滅する。
「お兄ちゃん、すごいすごい! カッコいいよ!」
「そうか? 菜々芽にそう言われると照れるなあ」
「そのバイブっていうの、武器だったんだね! 形が剣の柄みたいだもんね!」
「えっ、あ……うん。――そう、これは武器なんだぞ!」
ううっ、また俺は菜々芽に嘘をついてしまった……!
でもこれは仕方がないんだ。菜々芽を清く正しく育てるためには!
「アラタ、大変なのだな。兄というのも……」
「おおシェリル、わかってくれるか!」
「ナナメが無垢な心を失えば、魔法の威力が落ちてしまうものな」
――違う! 俺の心配はそんなことじゃないんだ!
しかしそれを説明しても、わかってもらえなさそうだ。……悲しい。
「ところでシェリル、俺たちこれからどうするんだ?」
「そうだな。とりあえず街に行こう。そこで冒険者ギルドに登録するんだ」
「おお、そういや女神も街を拠点にしろって言ってたな!」
「ああ。ギルドに加入すれば、モンスターを倒して生計を立てることもできるぞ」
いきなり最強の武器が手に入ったんだ。
ギルドに入ったらみんなの注目の的になるだろうな。
これぞ異世界転生! これぞチートの王道!
いや……もしかしたら街に着くまでに有名人になっちゃうかもな。
街道でモンスターに襲われている女の子に遭遇。さっそうと救出する俺。
いいぞ。いかにもって感じのイベントじゃないか!
くう~っ、ワクワクするぜ!!
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