第34話 ~次なる出発に向けて~ ①
チーム・ルナシスが帰還後、リーナはアイカを連れてのカナタとエルへの戦艦案内へ。マイキーとユララムは二人取り残され、ふとユララムが口を開いた。
「あの、マイキーさん、あの時話したかった事って何だったんですか?」
「ん? 何だっけ?」
「ちょっと、忘れないでくださいよっ。気になるじゃないですか」
「あの時……」
「ほら、俺が皆さんに術をかけた時に」
「……あぁ!!」
マイキーはわかりやすく手を叩いた。
「あのさ。タランチュグラ。覚えてるか? あの異常な強さの」
「……はい」
「あれって……さ、もしかして……」
「……………………すみません! 僕が……タランチュグラを高速でレベルを上げた奴なんです……」
ユララムは頭を深々と下げた。
「やっぱりなぁー……。おかしいと思ってたんだよ」
「本当に、あの時の俺はどうかしてて……」
「ま、その反省は大事だよね。リーナも怪我して大変だったしな」
「え……!!」
「死なないだけマシだけど。で、さ。それのお陰で俺たちは凄い奇跡を見たんだよ」
「え……?」
「アイカちゃんが強くなった理由、だよ。あのタランチュグラが出てなかったら、今でもびくびくしてたんじゃないかな。何も取り柄もないとか、言いそうだし」
「そう、なんですか……」
「レベル1からの異常なまでのレベルアップを見た時は興奮して飛び上がったし、俺」
「へぇぇ……!! それから、アイカさんは俺を怪しくは……?」
「うん。アイカちゃんや他のメンバーは気がついてなさそうだけどね」
「そうですか……あの、俺……!」
居ても立ってもいられなくなった様子のユララム。
「アイカちゃん達、全然そんなこと引きずってない感じだしさ。今更気がついてない相手に掘り返すのもなんか嫌だろっ? それに、あんな散々謝ったんだし」
「はい……」
「ここのメンバーと一緒に居られること、感謝しなよ、ユララムくんっ」
マイキーが爽やかに笑うと、ユララムは強く頷いた。
「はい! それは、重々承知してます……。ケイとも、ここのチームの力になると約束しましたから」
「……そのケイにバレなくてよかったな」
「……うわぁぁ……!」
ユララムはケイに拳を落とされることを想像して頭をつい押さえるのであった。
「さて、と。じゃ、そろそろ休もうぜ? 俺はもうひと仕事っ」
「わ、マイキーさん何するんですか?」
「んー? まだ秘密ー」
愉快にユララムへ返して自室へと歩き出したマイキーだった。
・・・・
「ねぇ、カナタは最初丸腰だったってエルに聴いたけど、どうしてあの時戦えたの?」
リーナは艦内を案内しながら、腕を組んでネオビードルへ放たれた光線を思い出しつつ問う。
「それが……僕にも詳しいことはわからないんですけど、どうしたらいいか分からなくて、叫んでたぐらいしか……。そしたら、エルはアイカさんを助けるために光ってて……僕も、その光を浴びたら……勝手に身体が動いてました」
ふむむ、とリーナはもっとわからなくなったぞと唸りだした。
「まぁ、何にせよあり得ないことが立て続けに起こってるってことよね」
そうだよねとアイカも首をかしげた。
「でも! 新しい仲間が増えてくれてあたしはすっごく嬉しいかな! メンバー減ったばっかりだし」
「え、リーナさんそれって……」
「あら、誰か抜けちゃったの?」
カナタとエルが話に食らいついて来たところで、リーナは得意気に髪を片手で流した。
「いい? 涙無しでは語れないのよ」
「え……! なにそれなにそれ」
「そう、なんですか……!」
その言葉に、アイカはどこかしどろもどろになりリーナ達から少し距離を置こうと離れるが、リーナから伸びてきた腕によって阻止された。
「ね。涙なしじゃ語れないくらい辛い思いしてるんだから。アイカは」
「ええ……! 一体、何があったんですか……?」
この状況から逃げられなくなったアイカは、憐れむような顔を向けられていた二人へとりあえず苦笑して対応するのだった。
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