第28話 ~目指す場所~
チーム・クラウド艦へ、惑星プルトーからの信号は届けられていた。
「プルトーが……。それは大変じゃないか」
端正な顔立ちに、画面を見た瞬間の同様で肩まで揃えられた髪を揺らしたのは、チーム・クラウドのクライアであった。
「ルナシスからの新人が入って間もないのに、早々だな……」
クライアは口元に手を当て、瞳を閉じた。
ライトという青年の左目の具合も気になるな……。
サナが居れば、大丈夫だとは思うが……。
クライアは立ち上がると、ケイの個人デバイスに発信した。
・・・・
強くなりてぇ
こんなんじゃだめだ
リアルの俺と
何も変わらねぇじゃねぇかよ――――!!
「ん……」
サナが瞳を開けると、胸のあたりがもやもやとするものを感じていた。
これは、自分のものではないということも分かっており、ライトを見ると、サナの横になるすぐ側で伏して眠って居ることから、時間が経っていることが分かる。
「お、起きたか」
頭から声が降ってきたと思い、サナが見上げると、ケイがサナを見下ろしていた。
「あ、ケイ兄……。あたし、また……」
「あぁ。んなこと気にすんなよ」
「うん……ありがと。ライト兄の目、早く治してあげたい。本当に、辛そう」
「相当だな。でも分かるぜ。大丈夫だ、焦んなよ、サナ」
「うん」
ケイがサナの頭を撫でると、二人は伏しているライトを見つめた。
「ライト兄の目を治すには、聖なるものが必要みたい」
「ほぉ、そりゃ、なんだろな」
「んー……それがまだ、はっきりと分からなくて……」
見るからに肩を落としたサナの頭に、ケイは優しく手を置いた。
「おいサナ。自信持ってな。サナじゃなきゃ、こいつはずっと闇の中だったんだぜ」
「うん……ありがと、ケイ兄」
サナはケイに対して少しでもと、笑顔を取り繕った。
少しして、ケイの通信機から呼び出し音が鳴り出した。
「おっ、クライアか……。直接俺にってなんだ?」
不思議に思いながらもケイは呼び出し音に出た。
・・・・
エルの身体がスポンッ、という音がしたように感じたほど、一気に抜き出た。エルが出られることの出来た時、カナタは座り込んで後ろに手を付いて荒い呼吸をしていた。
「カナタ、大丈夫? 運動不足?」
「なんだよっ、はぁ、あんまり運動は得意なほうじゃなくてさっ」
「そう? まぁでも、ありがとうっ、助かったよ」
エルはパンパンと手で身体に付いた土を払う。そしてその姿をなんとなく見ていて、ふと気がついた。
まず、身長が地面から数センチ程の大きさということ。20cmも無いだろう。そして――。
羽が、ある――?
「えっ!?」
「え!? なに、カナタ?」
カナタは驚いて地面に手を勢い良く付き、地面から数センチほどの身長のエルに顔を近づけた。
「何よぅ!」
「いや、その、エルには羽があるって思って」
「羽……? わ! わ!? 本当だ!」
「え!? 何だよその反応、僕が困るんだけど」
エルの背中に羽があるということで、二人して手を上げて驚くという、おかしな事態が洞窟内では起きていた。
そして、そんな平和な状況は長くは続かないのもゲームの世界では定めというものがある様で。
ズシン……
「え? ねぇ、カナタ」
「何?」
「今、何か地響き感じなかった?」
「え……。え、エルが感じたのなら……その……」
ズシン、ズシン……
「え!? これって……! モ、モンスター……!?」
「でしょう、どうしよう、カナタ」
「え、どうしようって言われても……! あぁもうっ」
カナタはエルを地面からそっと抱き上げる。
「とりあえず、安全なところに行こう! 僕、武器なにも無いからさ」
「え!? 武器無いの!? なにその自殺行為!」
「そう、だね……。僕だってどうしてか知りたいよ」
苦笑してカナタはエルを戦闘服の胸ポケットに隠れさせてあげるのだった。
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