~レイドボス・シードラゴン戦前夜~ ②

 マイキーの輝く笑顔を見た後、アイカは休息のため自室に戻ることにした。宴の席でうたた寝をしていたユララムは、見当たらなくなっていた。


「ユララムさん、部屋に帰ったのかな……」


 そうつぶやいたのと同時に、ライトのいつもと違う表情がうっすらと蘇ってきた。


 いつも、私のことを支えてくれているライト。

 その表情は、ぶっきらぼうなライトから、喜んでくれるライトまで様々。


 でも。どうしたんだろう、ここに戻ってきてからいつものライトじゃない気がする……。

 そんな事を考えていると。


「おい、どうしたんだよ?」


 はっとなって顔をあげると、一番気になっていたライトが。


「え、ううん! いや、何でもなくも、なくて……」

「はは、なんだそりゃ。ちょっと、その辺りにでも座って話すか」

「あ、うん……」


 ライトは宴が終わった席を指した。


 ライトの髪が濡れている。いい香りがすることから、シャワーから帰ってきた様子と伺える。


 椅子に、共に腰をかける。

 どうしてか、今までの緊張と、違う緊張が、胸にある様だ。


「何か、考え事してたのか?」

「あ、うんー……えっとねー……」


 ライトの事だよー……。

 様子が変なんだもの。


「まぁ、無理はできないけどな」


 でも、今言わないと、何だか

 ずっと変われない気がする。

 仲間として。彼が困ってる、今。


「ライトっ」

「ん?」

「大丈夫? 元気ない気がして……」

「は、俺? 俺はなんとも……」

「そ、そっか……」


 ライトがびっくりしてアイカを見ると、落ち込んだ様子に見えた。


「……ありがとうな、勇気いっただろ」

「へ? え、うん……」

「俺もさ、アイカの気持ち、分かるからな」

「そう、なの?」

「当たり前だろ。ここに来てから、だな。皆と普通に話すようになったの」

「そうなんだ……」

「だから、怖いって気持ちもわかるからよ。でも、伝えないと分かんねぇこともある。アイカなりの言葉でいいから、言いたくなったら言えよ」


 そうして、アイカの頭にぽん、と手を置くライト。


「ありがとう……」

「おい、紅くなられると恥ずかしいだろ」

「だってっ、恥ずかしいんだもの!」

「ぷっ、あっはは」


 ライトが笑い、アイカの頬はますます紅くなるのだった。


「俺はさ、強くなりてぇだけだよ」


 ライトは席立ち上がると、アイカを見つめた。


「強く……」

「ああ、強くなることが俺への支えになる」

「そういう、もの?」

「ああ、そういうもんだ。まぁ、アイカ、そこで寝てたら風邪ひくぜ、ん?

 ここでは風邪引かないのか?」

「わ、わかんない」

「そだよな。まぁ、とりあえずシャワーでも良いし、気分転換してこいよ」

「ありがと」


 ライトは柔らかく笑うと、背中を向け、手を挙げた。




 ライトは、あの時どんな気持ちで私にその笑顔を向けたの?


 強くなりたい。その言葉の意味を

 私はどうしてもっと早く、分かってあげられなかったんだろう。


 ねぇ、ライト――――。


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