~レベル・アップ~ ②


 時の……賢者?


 アイカが知っているゲームではまるっきり聴いたことも見たこともない。

 “時”という文字が、ユララムが少し頭によぎったが、こういったスキルが身に付くことは、レアなのか、それとも案外誰でも持つことが出来るのか。


 アイカは半ば混乱気味になったが、今は新しいスキルを会得した喜びをしっかりと味わうことにした。


 そして、気がついた。

 ユララム。

 助けに行かなければ!


「ほう、どれどれ……」


 戦いの最中、助けたかった人が何故ここに?


 初めは混乱したが、アイカは確かに助けたかった人物を前にしたことがわかった時、安堵の気持ちがこみ上げた。

 

「あ……! ユララムさん!!」

「ふぉっふぉ、今更気がついたのか、アイカさん。寂しいのぅ……じゃが、頑張りましたな」

「無事で……無事で、本当によかったです……!」


 アイカの瞳から一筋の涙が。ユララムは少し驚いてその表情を見つめた。


「……老いぼれはしぶといもんじゃよ」

「そうなんですか? でも、本当に安心しました……」

「って、アイカ、ユララムさん知り合いだったの?」


 リーナは驚いて二人を見た。


「あ、うん、タランチュグラ倒す時に、力になってくれたの……」


 先ほどの時が止まった時の事を思い出した。アイカとユララムだけが動け、あとは全て静止していたという、なんとも言えない、不思議な世界を。


「そうなのね! そしたら、よかったわ」

「え? 何の話?」

「わ! ね、アイカ! そんなことよりも、凄いよ! あたし達のレベル、一気に越ちゃってるじゃないの!」


 アイカはリーナに訪ねようとするが、リーナはアイカのデータを見て、興奮気味になっていた。


「ヒュー、アイカちゃんやるぅ!」

「ったく、一時はどうなるかと思ったぜ……」


 慣れた口笛を吹いたマイキーと、大きくため息をついて、頬を緩ませるライト。


「ご、ごめんね」

「ほらほら、これだけアイカ、反省してるんだから、反省会はもうおしまいっ」

「リーナ……ありがとう」


「さてと。アイカの大きな成長と大勝利を祝うのと! ユララムさんも仲間に入った事だし、そのお祝いも兼ねて、ルナシスに戻るわよ」


「は? 今何つった、リーナ」

「仲間って……ユララムさん?」


 驚いたライトとアイカはほぼ同時にリーナへ顔を向けた。


「なによライト、アイカ、見て分かんないの? ユララムさんは新しい仲間よ」

「いや、勝手に決めんなっての」


「ふぉふぉ、しばらくの間でいいんじゃ。少しの間でも、置いてはくれんかの」


 歳によって下がった目尻と潤んだ目に、ライトは少々罪悪感を抱く。


「そう言われちまったらな……」

「仲間が増えるっていいことじゃない。ね、マイキー」

「あ、うん、いいと思うよ、うん」

「なにあんた、ぼうっとしすぎ!」

「そんなことないって! ようこそ、チームルナシスへ!」


 マイキーは笑顔を取り繕って話すが、少しの疑問が脳裏に映る。あのゴーグルに映った綺麗な腕は一体何だったのか、新たな仲間へ不思議な視線を向けるマイキーだった。

 アイカも仲間が増えることは嬉しいが、ユララムの言動にはどうもひっかかるものがあった。


 確かにユララムさんは一人だって言ってたけど……。

 何で、あの場所にたった一人で居ることができたの……?

 ユララムさんの力は時を操れる、絶大な力を持っているのに……。


 疑問が浮かべば本当にきりがないが、リーナの喜ぶ姿を見て、自分もユララムがチームに入る事を受け入れようと思うのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る