~ロック・オン~ ②

「走れ!!!」


 ライトの大声に一斉に走りだすメンバー達。


「っていうかさ! これ! 俺たちのレベルじゃ全く歯がたたないよ!!」


 走りつつ、攻撃を交わすために後ろへの意識を忘れない。


「っていうか! ここ基本レベル10もないはずよね!? ったくルミナぁあ!!」


 リーナは通信機で即座にルミナを呼び出す。


『み……んな……ぶ? ……機……使……な…』


「……マジ……!? 雑音だらけ……! 通信機が駄目ならあたし達も帰れない!」


「マジかよぉおお!!!」


「ねぇ! リーナ! もし、ここで私達死んだらどうなるの……!?」


「一応! から……それは避けたいわね!!」


「うそぉおお―――!!」


 なんで!

 なんでこんな生き物が居るの!!

 ゲームだって分かってるけど、こんなのレアにも居てもおかしくないけど!!


 でも!!


「お前ら、皆散って走れ!!」


「そっか!!」


「おっけ!」


「うん!」


 それぞれがバラバラになって走る。



 

 絶対、振り返りたくないと思った。

 だって、あたしの後ろ。ずっと振動が止まらない。

 でも、人間怖いもの見たさっていうのもあるのか見ちゃうんだよね。



 身体はステルスで見えないが、足だけがバラバラ、バラバラと蜘蛛特有の動きを見せていて、おぞましさが半端ない。


 振り返ってすぐに、空間から白い糸が大量に吐き出されているのが見えた。近くの木々が蜘蛛の糸だらけになり、薄い繭のようになっていた。


 あんなのに捕まったら……!! 怖い……!!!




「いやぁあああ!! もぉやだよぉおおお!!!!」


 なんであたしばっかりこんな目に!!



「こないで――――!!!!!」


 アイカはあらん限りの声をお腹の底から出した。


 すると足元を地形に取られてしまい、身体が急に軽くなったと思えば転んでしまった。


「痛っ……!」


 逃げようと必死で身体を起こすが、周囲の異変に気がついた。



 風が


 地が


 空間が



 静止していた。




「え……」


 振り返ると、不自然な形で止まったタランチュグラが居た。



「素晴らしいですな、お嬢さん」


「は……い?」


 どこから現れたのか。

 アイカのすぐ目の前には見たことのない、老人が立っていた。

 背が低く、等身大の杖を持った、キャラメル色をしたローブを身に纏った老人が。


 老人は、アイカへ確かに微笑を見せていた。




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