chapter 13 dark side Ⅴ
「おぎゃあ! おぎゃあ! おぎゃあ」
と泣き声が響き渡る。
「ね~んね~んころりよ~、おこ~ろ~り~よ~。坊やは良い子だ~、ねんねしな~」
と美しい歌声が響き渡る。
小さな暗い部屋で母と子がお互いの絆を紡ぎ合わせていた。
ように思えたのだが。
赤ん坊は一向に泣き止もうとしない。
別に悲しいからではない。
それが赤ん坊なのだ。
しかし、母親はそれが理解できなかった。
母親は自らの記憶の中に掠れるように存在する子守唄を紡ぐことしかできなかった。
それは涙を流す赤ん坊のために歌っているのではなかった。
赤ん坊を寝かしつけるためでも、落ち着かせるためでもなく、母親自身のために歌っているのであった。
自らの心を落ち着かせるために。
そうでもしなければ母親はこの赤ん坊を
この母親にとって赤ん坊は『邪魔』でしかなかった。
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