4.地底のガッダ~リクの隠れ里
4-1 ガッダへの山道
グラン大聖堂を出発し、土水火風の精霊石集めの最初の目的地となるのが、リンカーン王都から北にあるドワーフの町「地底のガッタ」である。
町があるのは標高1500メートルほどのなだらかな「
俺たち勇者一行はかろうじて道と呼べる山道を、重量級の大型馬車をひくガブリエルとミカエルが脚を痛めないよう崩れやすい足場を避けて慎重にのぼっていた。
速度が落ちれば、そのぶん魔物の襲撃も増える。
青葉山の山道にあらわれる敵としては、いずれも最下級のF級(獣魔)に分類される「
「毒毒キノコ」は体長120センチくらい。手足のはえたシイタケという見た目で、名前のとおり毒の胞子を吹きつけてくる。
「ブラウンブラウニー」はそれよりもさらに小さく、幼稚園児くらいの毛むくじゃらの
「火トカゲの尻尾」はなぜこれが単体で存在しているのか不思議な、顔も手足もない赤い尻尾だけの魔物だ。宙に浮き、攻撃方法はシンプルにファイアーボールのみ。
いずれも俺単独でも十分対応可能な
セシアはもともと聖騎士として団体戦の訓練を受けてきたため、すぐに前衛防御職としての立ち位置を確立し、ネネは持ち前の沈着さで的確なタイミングで魔法を放つ後衛職、ユズハは生来の器用さで要所要所で他のメンバーをフォローする遊撃隊的な動きをするようになった。序盤としてはまずますの仕上がりといってよいだろう。
-------------------------------------------------------------------------
『 カガト・シアキ 』
勇者リクの意志を継ぐもの。7人の嫁を求めて旅をしている。
【種 族】
【クラス】 勇者
【称 号】 大型馬車第二種運転免許
【レベル】 5(F級)
【装 備】 龍王の剣(S級)
妖精王の鎧(S級) 心眼の兜(S級) 天馬の靴(S級)
【スキル】 長剣(E級) 短剣(F級) 斧(F級)
格闘(F級) 盾(F級)
交渉(F級) サバイバル(F級) 乗馬(F級)
救世の大志(F級)
周回の記憶
-------------------------------------------------------------------------
-------------------------------------------------------------------------
『 セシア・ライオンハート 』
勇者カガトの仲間にして婚約者。「
【種 族】
【クラス】 聖騎士
【称 号】
【レベル】 5(F級)
【愛憎度】 ☆/☆/☆/-/-/-/- (D級 我、勇者の盾とならん)
【装 備】
聖騎士の鎧(B級) 聖騎士の兜(B級)
【スキル】 長剣(E級) 大剣(F級) 槍(F級) 弓(F級)
格闘(F級) 盾(E級)
聖魔法(F級)
乗馬(E級) 水泳(F級)
裁縫(F級) 料理(F級)
蜘蛛恐怖症
-------------------------------------------------------------------------
-------------------------------------------------------------------------
『 ネネ・ガンダウルフ 』
勇者カガトの仲間にして婚約者。王立魔導院に所属する二等魔導士。
【種 族】
【クラス】 魔導士
【称 号】 炎の使い手
【レベル】 5(F級)
【愛憎度】 ☆/-/-/-/-/-/- (F級 いろいろ教えてあげたい)
【装 備】 賢者の杖(A級) 水の羽衣(A級)
闇夜の三角帽子(A級) 幸運のサンダル(A級)
【スキル】 短剣(F級) 槌(F級) 杖(E級)
土魔法(F級) 水魔法(F級) 火魔法(E級) 風魔法(F級)
薬草学(E級) 魔道具作成(E級)
魔導の探究(F級) 魔力操作(F級)
あがり症
-------------------------------------------------------------------------
-------------------------------------------------------------------------
『 ユズハ・ケットシー 』
勇者カガトの仲間にして婚約者。盗賊団『オシリス団』の団員。
【種 族】
【クラス】 シーフ
【称 号】 忍び寄る影
【レベル】 4(F級)
【愛憎度】 ☆/-/-/-/-/-/- (F級 勇者なんてチョロイにゃ)
【装 備】 つらぬき丸(A級)
隠れ
【スキル】 短剣(E級) 弓(F級) 投擲(F級)
索敵(F級) 開錠(F級) 罠(F級) 追跡(F級)
交渉(F級) サバイバル(F級) 薬草学(F級) 猫会話(E級)
隠密(E級) 木登り(E級)
裁縫(F級) 料理(F級)
盗賊の
-------------------------------------------------------------------------
-------------------------------------------------------------------------
『 称号:大型馬車第二種運転免許 』
大型馬車で100km走行した者に贈られる称号。
客車の揺れを軽減し、馬の疲労度を上がりにくくする。
-------------------------------------------------------------------------
-------------------------------------------------------------------------
『 称号:
防御を50回以上成功させた者に贈られる称号。
防御成功時、ダメージをさらに半減する。
-------------------------------------------------------------------------
-------------------------------------------------------------------------
『 称号:炎の使い手 』
火属性の魔法を50回以上使用した者に贈られる称号。
火属性の魔法の攻撃力が10%上昇する。
-------------------------------------------------------------------------
-------------------------------------------------------------------------
『 称号:忍び寄る影 』
不意打ちを10回以上成功させた者に贈られる称号。
不意打ちの確率がわずかに上昇する。
-------------------------------------------------------------------------
俺の称号はガブリエルとミカエルの負担軽減と婚約者たちの快適な旅のため。他の3人の称号は取得条件に合致したため自動的に上書きされたものである。
ちなみに、パーティーメンバーの称号は本人でも変更することができず、「結盟の腕輪」をもつ俺だけが自由に切り替えることができるらしい。もっとも、パーティーメンバーの称号は周回引き継ぎされないため、俺のように豊富な引き出しがあるわけではないのだが。
「お、まだあのスケルトンドッグがついてきてるな。戦闘になるかもしれないから、みんな、念のため装備はそのままにしておいてくれ」
御者台の前方にとりつけられたサイドミラーに、すこし距離をおいて追ってくる1匹の魔物の姿が映っていた。
F級の獣魔「スケルトンドッグ」。四足歩行の犬型スケルトンで、本来はグラン大聖堂のある「
それを山道にさしかかってからここまでに、もうすでに4度も目撃している。足が遅くて追いつけないのか、そもそも襲う気がないのか。
魔物が棲息域を離れて追いかけてくること自体はグランイマジニカでもさほど珍しいことではないが、俺たちを見失っても自分の縄張りにもどらず、そのまま追いかけてくるというのはいままでの周回ではなかった現象である。
「ようやくいなくなったようだ。もう警戒を解いても大丈夫だぞ」
俺が御者台から客室につながる窓をのぞくと、セシア、ネネ、ユズハの3人は話に夢中で、そもそも俺のことなど眼中にない様子。
山を駆けくだる乾いた風が、俺の髪をかきあげ、巻きあげられた砂利がたずなをにぎる腕をしたたかに打つ。
まあ、たしかにこのあたりの戦闘はF級の獣魔ばかりで、緊張感を維持しろというほうが土台無理な話か、と自分で自分をなぐさめてみる。
嫁同士が仲良くあることは俺の幸せなハーレムライフにとっての最重要事項。けれど、俺だけ孤立してしまったら、それはそれで悲しすぎる展開ではなかろうか。
心にも向かい風が吹きつけ、さびしく馬車のなかの会話に耳をそばだてる。
「さっきの戦闘には参ったにゃ。
毒毒キノコを後ろから突き刺そうとしたら、急に胞子をまき散らしはじめて。もうすこし前にいたら毒を吸いこむところだったにゃ」
「……毒毒キノコの毒は呼吸器系に作用する神経毒。
徐々に息ができなくなって、窒息する」
「カガトどのはリーダーとしてさすがによく見ています。とっさにユズハを引っ張って助けてましたね。きちんとお礼は言いましたか? 親しき仲にも礼儀ありですよ」
「まあ、すこしくらい感謝してやってもいいけどにゃ。
でも、腕を引っ張られて後ろに倒れたとき、カガトに胸をもまれたのにゃ。きっとあれはわざとやっていたにゃ」
「……ボクのお尻もさわった。胸じゃなく」
「それは火トカゲの尻尾にネネが狙われたときですよね?
ファイアーボールがネネの近くで
反省すべきところは多々ある。
だが、目の前に柔らかなおっぱいがあり、お尻があり、どうして無心でいられようか。「ラッキースケベ」は外していたものの、チャンスがあればチャレンジしたくなるのが男というものの
「セシアはもう生おっぱい見られてるからにゃ。これくらいでは動じないかもしれにゃいけど、アタシはまだまだ高く売りつけるつもりにゃ。
そうにゃ、アタシのおっぱいに触りたいなら、1万ゴールドは払ってもらうにゃ」
「……カガト、お金持ち」
「くっ、そうだったにゃ。婚約のためなら、喜んで大金塊をさしだしてくる変態だったにゃ。お金で勝負したら、アタシは性奴隷みたいにエッチなことをされそうにゃ」
「……カガトはそこまで悪人じゃない」
「ネネの言うとおりです。カガトどのは女好きですが、勇者として立派な振る舞いもできるのです。だから、私が徹底的に教育して理想の勇者になってもらいます。
欲求不満でユズハやネネのを触ってしまうのなら、私が勇者の盾として代わりに」
言いかけて、セシアが顔を赤くしてうつむく。
「んーん? 欲求不満はセシアのほうじゃないのかにゃ」
「……カガトに触ってほしい?」
「ば、バカなことを言わないでください。私はあくまでもカガトどのが不埒なおこないをするくらいであれば、この身を挺して止めなければ、と」
「この身を挺するというのは、どの身かにゃ?
ここかな、この大きいやつなのかにゃ」
「やめなさい、ユズハ。そこは、あん、だから」
「……二人とも大きい……」
頑丈なはずの馬車がぎしぎしと揺れている。
俺はガブリエルとミカエルが動揺しないように手綱をしぼりつつ、徐々に岩肌が荒くなってきた道をゆっくりと進んだ。
「そろそろ『地底のガッタ』の入り口に着くぞ!」
御者台から声を張りあげる。チラッと振りかえると、ユズハがセシアに馬乗りになり、なぜか二人とも服が半乳状態までめくりあがっていたが、身に危険が及びそうなので見なかったことにしよう。
長い登り坂が終わり、山肌の向こうに空がひらけてきた。
高原で空気が薄いせいか空の青が深い。ところどころに
ようやく衣服をととのえたらしいセシア、ユズハ、ネネが馬車の横の窓を開放して左右から顔をのぞかせた。
「窪地に黒くて大きな門が立っているのが見えるだろ。あれがガッタへの入り口だ」
御者台から指さした先には、遠目からもはっきりとわかる巨大な鉄の門扉。カルデラとよばれる火山の火口部分が陥没して生まれた窪地の中心部、ひときわ大きな岩に黒光りする門がうがたれていた。
すり鉢状のカルデラのなかは木々がまばらで下草もすくなく、灰褐色の角ばった巨石が点々とそびえているのが印象的であった。下り坂にかわった道にしたがって進むにつれて、それぞれの巨石に鳥や獣の姿が赤や黒の刻線によって躍動的なタッチで彫られているのが見えた。
-------------------------------------------------------------------------
『 ガッタの
ドワーフたちの街「地底のガッダ」の正門。
大地の母の「大いなる
-------------------------------------------------------------------------
巨大な
「ここより先は我らドワーフの住まう世界。地上の者よ、名を名乗られよ」
俺は馬車を停めると、大神官ホーリィの刻印が見えるように親書の筒を物見櫓にむかってかざした。
「俺の名は、カガト・シアキ。リンカーン王国、聖王ウルス・ペンドラゴンの
聖典教の大神官ホーリィ・ロングネックより、ドワーフ国王ガガーリン15世陛下への親書を預かってきた。開門を
ドワーフの門番2人が髭を揺らして、互いにうなずきあう。
「我らが王は勇者召喚の儀式をすでに聞き及んでおる。
勇者カガトとその従者、通ってよし! 聖典教の使者には通行税を免除する!」
巨大な鉄の扉がきしみながら左右に開いていく。
鉄臭さと硫黄めいた地下からの風に嫌がるそぶりをみせるミハイルとガブリエルをなだめすかして、ゆっくりと馬車がドワーフの地下王国へと入っていく。中は自動車用のトンネルよりも広く、アーチ型の天井には等間隔で採光用の窓がうがたれ、おもいのほか明るかった。下へ下へと降りていく
ゆっくり長い時間をかけて次第に平たんとなる下り道を進んでいくと、とうとつに視界がひらけ、俺たちは最初の精霊石がある地底の町へと足を踏みいれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます