爛れる姉妹

 マリの家に旅の途中の5人姉妹が訪ねてきました。知らない人たちでしたがマリは迎え入れ、数日の間泊めてあげました。一番幼い末の妹はマリにとても懐いて、ずっとマリの家にいたいと駄々をこねました。それを一番上の姉が「だめよ」と言って叱ります。


 彼女たちは旅を続けるためにマリの家を出て行くことになりました。末の妹は「また来るからね」とマリに言い、マリは「うん、またね」と返し、別れました。


 すると本当に、末の妹は頻繁にマリの家を訪れました。何度姉に連れ戻されてもまた来ます。いつもいつの間にか家にいて、気掛かりなことに、日ごとに彼女の身体は赤く爛れていきました。毎日姉が来て彼女を連れて帰りますが、明日はどのくらい爛れた姿で来るのだろう、とマリは不安に思いました。このままだと数日後には可愛い彼女は赤い肉塊になってしまいそうです。


 何度目かの迎えに、一番上の姉が来ました。爛れが進行し、言葉を発さずただ笑うだけになった妹を抱き寄せてマリに話を始めました。彼女たち姉妹は全員、身体が爛れて肉塊になる運命の子なのだと言います。身体の崩れと共に正気を失い、心も壊れてしまうそうです。姉は妹の姿に胸を痛めていました。


 その夜、マリは夢を見ました。赤い肉のような壁に囲まれた場所で、元々は人であったであろう肉塊が項垂れているのです。肉塊はマリに気がつくと一斉に襲いかかってきました。


 恐ろしい夢に飛び起きて、ハッと窓の外を見ると、遠くの方にもうほとんど人の形をしていない赤い妹に寄り添う赤い姉の姿があり、マリの方を、すこし寂しそうに見ていました。

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