カラスの王子アメアンソン

 静かな住宅街で、演劇の練習をしている女性がいました。彼女は窶れていて、くたびれた服を着ています。マリが様子を見ていると、彼女はマリに演技の練習の手伝いをしてほしいと言いました。台本を渡され、内容に目を通したところ……


 世にも珍しい金のカラスがいるという噂を聞いたわるい人間が、その金のカラスたちのお姫さまをお金儲けに使うために捕獲しようとする。けれど金のカラスを神様の使いだと信じている人が彼らからカラスのお姫さまを守る。そんな戦いの最後は、自分を守ってくれた人間を庇ってカラスのお姫さまは銃で撃たれて死んでしまう。……というものでした。


 マリはカラスのお姫さまを守る人の役で、女性はカラスのお姫さまの役でした。彼女の演技指導は熱心過ぎて、なんだかヒステリックです。


 厳しい練習を終えてへとへとになった帰り道、マリは本物の金のカラスが飛んでいるのを見ました。それを見たマリは、いつか噂で聞いた『金のカラスの王子アメアンソン』の話を思い出しました。この街の空を飛んでいると言われている、金のカラスの王子さまです。きっとあのカラスはそれに違いありません。マリはアメアンソンを追いかけて落ち葉に覆われた森の中へ入りました。アメアンソンは人間に襲われていました。マリは人間達の気を引いて、こっそりとアメアンソンを逃がしてあげました。

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