お祝いのクッキー

 恋人同士の若い男女がいました。今日はそのふたりの交際記念日で、盛大なパーティーが開かれます。マリはそのパーティーに招待されたので、お祝いの品として、ふたりの似顔絵をチョコレートペンで描いた大きなクッキーを贈ることにしました。


 クッキーはなかなかの出来で仕上がりました。マリはそれを大事に抱えてふたりの交際記念お祝い会場へ行きました。


 会場にはたくさんの人たちがいて、ふたりを祝福しています。順番を待ってふたりにクッキーを渡すと、とても喜ばれました。しかし、チョコレートの部分は冷たくて歯が立たないほどに硬くなっていました。受け取った2人はそれに気がつき残念そうにしています。マリは電子レンジでほんの少し温めてチョコレートをやわらかくしようと思いつき、調理場を借りて2秒ほどレンジで加熱しました。すると……チョコレートは原型がなくなるほどでろでろに溶けてしまい、クッキーはどこかへ消えていました。


 もうどうしようもありません。マリが気まずそうに溶けたチョコレートを見せると2人は「こんなことをするなんて信じられない! あんなにかわいいチョコレートクッキーだったのに!」と泣きながらマリを責めました。マリは居たたまれなくなり、一度帰宅してクッキーを作り直すことにしました。


 まずは土台のクッキーの生地を作ってオーブンに入れました。しばらくしてオーブンを開けるとクッキーは勝手に『不思議の国のアリス』のチェシャ猫の顔の形になってニヤニヤと笑い始めました。これではまたがっかりされてしまいます。マリは落胆してクッキーの作り直しに取りかかりました。

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