暗闇練り物
小さなスタンドライトがひとつ点いているだけの暗い洗面所でマリは小麦粉を練って麺を作っています。洗面器がいっぱいになるほどの大きな小麦粉の塊を練り続けていると、だんだん、塊は麺になってきました。
定期的に誰かが洗面所に入って来てマリと小麦粉生地の様子を確認しに来ます。それは黒い影で、この作業の監視役です。
監視されながら練り続けていると「マリさん、お電話ですよ」と誰かから声をかけられたのでマリは小走りで声の方へ向かい、扉を開けるとそこは白すぎる内装の、何かの事務所でした。
受話器を渡され、マリが「はい」と電話に出ると「ああ、合っていたんですね。よかった。わたしです」と男性とも女性ともつかない声が聞こえました。マリは電話相手をなんとなく知っているような気がしましたが思い出せません。
「ね、遊びましょう。今夜。大丈夫?」と電波が弱いのか、向こうからは聞こえる声にはノイズが混ざっています。マリが「ごめんなさい、声が聞き取りにくいの」と伝えると「遊びましょう、遊ぼう。今夜、遊ぼう、遊ぼう」と執拗に言われました。マリは少し心地が悪くなって「後で掛け直しますね」と言い、電話を切りました。
掛け直す事は無くマリは誰かが運転する車で家へ帰りました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます