第76頁目

「ここに集まってもらった皆様。この時が来ました!。

 あっ。五号室の人には、説明が必要かも知れませんが、これから説明します」

 これから、アフロ教授がオレに重大発言をするらしい。

 なにがなんだか分からないが、

 オレは、恐る恐るアフロ教授の話しを聞く事にしよう。


「五号室の人、確か管理人さんから、以前にこの十号室(管理人室)が四号室だったことを聞いていますね?」

 アフロ教授の問いに対してうなずくオレ。

「その五年前より、ひと昔以前の前の昔話しを聞いているのなら、話しは早いですが、改めてお話しましょう・・・」

 アフロ教授は管理人さんが大雑把おおざっぱに話してくれたことを(6頁参照)事細かに話し出した。


「その、五年前のひと昔前とは、実は二十二年前の事なんです。

 早い話しが、二十七年前の話しになります。

 自殺として見つけられた、女性の死体。実は他殺でした。」

 はっ?

 えっ?

 他殺?

 自殺でも怖いのに、他殺?

 オレは、その言葉に顔が青ざめた。

 お、おい、勘弁してくれよ。

「その時円満に暮らして住んでいた女性は、当時二十歳でした。結婚して、生まれて二歳になった子供もいました。

 そして、そのとても幸せな家庭に、ある男が踏み込んできたのです・・・

 学生の頃、同級生のその女性を 好きで好きでしょうがない思いが、頭を混乱させ、思い出だけに生きていた、かなり狂った、クレイジーな男性が・・・

 その男性は、その女性の部屋に忍び込み、その女性を自分だけのものにする為に殺したのです・・・誰にも渡したくない、そんな思いで殺したのです・・・無残な殺人事件でした。」

 教授が真剣な眼差しで言う。

 オレは、その話しに凄い衝撃を受けた。

 そんな、ただ好きだから殺した?

 なんだ、その矛盾した世界は・・・

 好きなら、殺す必要はないじゃないのか?

 自分のものにしたいから殺した?

 なぜだ?

 どうして、そんな事をする必要があるんだ?

 オレは、自分と問答している時に、ふと気づいた。

 えっ?

 あれ?

 も、もしかして、

 ま、まさか!その女性って?!

 アフロ教授の奥さん?

 奥さんなのか?

 奥さんだったのか?

 えっ?!

 ま、まさか、奥さんだったのか?。


「もしかして・・・その女性って、教授の奥さんだったんですか?」

 オレの言葉に教授は悲しくうなずく。

「 丁度、その時わたしは、コンピューター関連の仕事をしていて、夜中まで残業していました。

 

 そして深夜。仕事も終わり、帰宅してみると、可愛い娘の前で血だらけになった、わたしの妻がいたのです。

 わたしは、目の前に起こっていた現実が理解できませんでした。

 目の前に見える血の海が、わたしを震えさせました。

 その時、わたしの全身がしびれて、その場で崩れて行くように泣き叫びました。

 どうして、わたしの妻が殺害されたのかが、全く分かりませんでした。

 どうして、こんな事が起こったのかが不明だったので、すぐに警察を呼び、色々と犯人を捜しましたが、全く手掛かりはありませんでした。

 指紋さえも見つかりませんでした。

 そして、事件は未解決のまま終わりました。

 

 でも、わたしはくじけませんでした。

 絶対に犯人を突き止めてやると思ったのです。


 数日して、妻の遺品を整理していると、一通の妻宛の手紙を見つけ、その手紙から、犯人が男性だと分かったのです。

 手紙には、

 『あなたをいつも見ています。いくら逃げても僕の手の中です』

 と書いてあったのです。

 それも、長年ストーカーをやっている男性だと分かりました。

 その時わたしは、妻の生前に、ストーカーがいると言う話しも聞いた事も思い出しました。

 でもわたしは仕事で忙しくて、妻の発言には、一切聞いてあげられませんでした。


 ・・・そして、ストーカーによって、妻は亡くなってしまいました。


 あの時、聞いてあげれば救ってあげられたのかもしれない。

 きっと、その時聞いてあげれば、殺人事件は起こらなかったかもしれないと・・・


 でも、今、そう思っても遅すぎました。

 もう、どうしようもないのです。

 もう、どう悔しさをぶつけたくても、

 わたしの妻は生き返りません。

 そして、わたしは、その男性を憎むようになり、探すようになりました。


 でも、いくら探してもいくら捜索しても、全然見つからなかったのです。

 そして・・・娘も大きくなるにしたがって、娘もその男性を憎み始めました。

 それが、憎しみから恨みに変わり、

 今、犯人・・・いや、犯人の息子に近づいたのです 」

 ん?

 娘?

 えっ?

 娘ってもしかして、真菜美さんの事?

 ってか、犯人って、

 もしかして、

 えっ?犯人の息子?。

 も、もしかして勇次の事なのか?

 勇次の事を言っているのか?


「真菜美さんって、教授の娘さんなんですか?」

 アフロ教授の大事な過去の話しを突然さえぎってしまったオレ。

「はい。真菜美は、わたしの実の娘です。

 次、話しを続けてもいいですか?」

 すっかり、話しのテンポを崩してしまった。

「あっ、すいません。続きをお願いします」

 さえぎった事に気まずい空気の中、何もなかったように、引き続きアフロ教授が話す。

「では、続きを・・・

 そうです。やっと見つけました。でも、もう遅すぎました。

 犯人の息子が、両親を殺害して、次にわたしたちを殺そうとしているのです!」

 えっ!

 勇次が両親を殺して、次に真菜美さんとアフロ教授を狙っている?

 どういう事?

 どうして、そうなった?


「えっ?殺す?どうして、そんな事に?」

「多分、証拠隠滅でしょう。父親が殺人犯と知って、まず父親を殺し、次にその過去を知っている母親も殺したのだと思います。

 あの殺人犯の息子の勇次は、全ての証拠隠滅に走っていったのです。

 この事件を知っている、関わっている人物は全て自殺として見せかけて、殺されました・・・

 わたしの両親も親戚も、そして、わたしの妻の親戚も・・・

 その時、恐れた わたしと真菜美は、必死に逃げて身を隠しました。

 あれから、数年が経ち、

 そして今、逃げ回っている勇次が、真菜美を人質にしています。」

 なるほど、

 勇次が殺人を犯して、

 やっと犯人が、父親だと分かっという訳か?

 こんな、とても長い時間に

 凄い、憎悪と恨みと復讐が絡み合った事件だなあ。

 それにしても、子供まで受け継ぐ事件って、なんなんだよ!

 凄すぎるよ!

 だけど、

 えっ?

 あれ?

 そんな訳の分からい殺人事件に、オレも巻き込まれているって事なのか?。

 なんてこったい・・・


「なんて意味が無いことを・・・父親の過去の殺人を知って、最後には両親を殺したって・・・なんで、そんな意味の無いことを・・・ただ、罪が増えるだけじゃないか!」

 って事は、

 勇次は、父親の証拠隠滅も手伝って殺人をしていたって事か?

 むごい!非情にムゴすぎる。

 オレは、そんなキレた性格の勇次を悲しんだ。


「そして、真菜美が捕らわれました。と言うより、

 わざと近づいて罠を張ったのです。全て計画的です」

 ん?

 えっ?

 全て計画的?

 罠を張った?

 も、もしかして、真菜美さんがおとりになった?

 はぁ?

 ええええぇぇぇぇ!

 真菜美さんが、おとりになっている、全て作戦だったのかよ!

 おいいいぃぃ!

 で、いったいオレは、どんな凄い作戦に巻き込まれているんだ?!。

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