第58頁目
「教授ところで、よく集めましたねこんなに」
どこからか集めたのか判らないスナックやバーにあるような、赤いフカフカとしたソファーを 見つけると、思わずオレはそこに腰掛ける。
「わたしではございませんよ、残念なことに・・・三号室の保池(ぼち)さんです」
あっ、そういえば三号室の人って、保池(ぼち)さんだったよな?。
普段、称号で呼んでいるから、まるっきり名前も忘れていたよw。
アフロ教授の黒いサングラスの奥に見える笑った目。
ウォーター・ブルー色の巨大なアフロとサングラスと医者の白衣は、もしかしてステータスなのか?
でも、とても、りりしい顔しているよね。
もし、アフロ教授を犬に例えるとしたら、『 ボルゾイ 』ぐらいかな?
羽美(うみ)さんは、『 ポメラニアン 』。
七・三饅頭が、『 ブルドッグ 』。
そして、モヒカンガイコツが・・・
えっとぉーー・・・
ま、まあ、
まあ、とりあえず、犬に例えるのなら『 雑種の屍(しかばね)』って感じかな?
ちなみに、
タメ口野郎が、『 ボーダーコリー 』で、
怪力モアイゴーレムが、『 チャウチャウ 』で、
おしめギツネが、『 ダルメシアン 』で、
フライド野口さんが、『 柴犬 』ってところだろうか?。
まあ、知っていてアフロ教授に言ってみたが、応えはオレの想定内だった。
「でも、わたしのロボット創作にも役立っているガラクタやスクラップたちなんです。感謝していますよ。保池(ぼち)さんには」
ロボット創作?
えっ?、こんなガラクタやスクラップの部品で?
えっ?、もしかして羽美(うみ)さんも、これで創ったのか?
「も、もしかして教授・・・羽美(うみ)さんも、このガラクタらの部品で創ったんですか?」
「まあ、遠からず、近からずですね。
わたしの研究で作ったのです。例えガラクタやスクラップで創り上げたとしても、わたしの頭脳の限りの中で生みあげたものです
・・・また、説明しましょうか? ヒトノゲノムについて?」
お、おい!、また、あの長ったらしい話しを聞かせようとしているのか?
それは、とても勘弁な事だ。
かなり迷惑だ。
「えっ!遺伝子の情報の話しですよね?」
「ごもっともです。そのお話しでもしましょうか?」
アフロ教授のサングラスの奥の中で光った瞳。
何か話題を変える手はないのか?
言葉に迷い冷や汗が流れる・・・
オレは咄嗟に昨日の事を話題に挙げる。
「さ、昨晩の台風で、突然皆さんが消えたのですが・・・ なにかトリックでもあるんですか?」
いきなり話題を変えるしかない今は・・・
オレは戸惑いながらも必死になる。
「それは、テントの横に秘密の抜け穴を作ってあるんですよ。
秘密通路とでも言いましょうか?・・・
各部屋の押入れの隠し扉につながっているんです。」
はぁ?
え゛っ
ええぇぇぇぇ!!
秘密の抜け穴?秘密通路?押入れの隠し扉?
なんじゃそりゃああ!
何が何だか把握できないが、凄いのは確かだ。
けど、すげーー!
抜け穴があったのか!
「・・・だ、だから、みんな来るのも早いし、帰るのも早かったんですね」
今までの疑問と不思議が頭の中でやっと解決する。
「五号室の人の部屋にも有りますよ。今度お使いください」
えっ?オレの部屋にも装備されているのか?
すげー初耳だ!
「えっ!。はぁ、ぜひ、使ってみます」
今度お使いください?って、それは強制なのか?
強制で言っているのか?。
なんてこったい。何でも有りだな。
もちろんアフロ教授が作ったのだろうなあ。
「あっ、五号室の人。 昨晩言うのを忘れましたが、明日から大事なイベントが待っています」
「えっ?イベントって何ですか?」
オレは、驚きの顔を見せる。
「このアパートに引っ越してくると、各部屋を訪問できると言うイベントがあるんですよ。
親しい仲にも礼儀あり。と言う言葉があるように、
住人として、仲間として、住むからには、生活を見る義務があるのです。
アパートの公約にも記載されていますが、
乙は甲、甲は乙の住人の生活を十分に把握する。
と言う項目があるのです。」
えっ?
それってイベントなのか?
それって、単なるあいさつ回りだよな?
ここには、そんな規則があったのかよ!。
で、でも、これ以上あいさつ回りしたくねー!訪問したくねえーー!。
そんな強制的な家庭訪問はしたくねぇーよ!。
「明日から、一号室から訪問してください。お願いしますね。大事なイベントなので・・・」
「は、はあ・・・わかりました・・・が、がんばってみます・・・」
なんてこったい、
単なる罰ゲームじゃねぇーか!。
愕然として、唖然として、
オレは部屋へと重い足取りで戻っていく・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます