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「あれ?あの二人がいない・・・」
席を見渡すが、あのタメ口野郎と、おしめギツネの姿が見当たらない・・・
オレは首を傾げながら目で人数を改めて数え追う。
だが、姿も気配も一切ない。
あれ?、さっきまで見かけたのに帰ったのかな?
と、遠くから
何か叫び声が聞こえる・・・
ふと見ると、何やら自作の仮面を被った、特撮ヒーロー?と、
おしめギツネの姿。
「単なるイベントですよ
棺燃(ひつぎ)さんは、特撮が好きで、しょっちゅう特撮ヒーローの格好をしているんですよ。
我流で武術をしている最強女(もしめ)さんがいつも相手役なんです」
チュートリアルのアフロ教授。絶好な見事な
「へーーー。そうなんだ。イベントなんだ!」
てか、ここの住人って・・・凄いな 部屋にはお邪魔したくない人々ばかりのような気がする。
趣味に、マニアに、ヲタクに、コレクター。
微妙な表現がランクを作ってしまう。
一号室のタメ口野郎=特撮マニア。
二号室の怪力モアイゴーレム=プラモ・フィギュアヲタク。
三号室のモヒカンガイコツ=スクラップ・ガラクタコレクター。
六号室の七・三分けつぶれ饅頭=昔のアイドルヲタク。
七号室のアフロ教授=趣味で改造や発明。
八号室のおしめギツネ=趣味で我流の武術。
九号室の羽美(うみ)さん=多分、趣味のパソコンでのネット・・・
人それぞれ、趣味はあると思う。
『 類は類を呼び友は友を呼ぶ 』や『 類は友を呼ぶ 』と言う言葉はあるが、
みんな趣味が違うのに、よくぞ仲良く話しが合うものだ 。
共通点は、ボロアパートの住人って事だけだよな ?。
多分、気が合わなきゃこんなに住人たちも仲良く出来ないものだし、相手も出来ないとは思う。
と、そんな事を思っていた時、突然オレの視界から二人がいなくなった。
オレは、今NOWで見ていたタメ口野郎とおしめギツネの姿が、いきなり突然瞬間に消えたのに驚きの顔を見せる。
「あれ?、いきなり二人ともいなくなったぞ・・・あれ?」
オレはキョロキョロしながら、二人を捜す・・・が、
えっ、・・・てか、みんながいない・・・
今までいた、住人全員がいない!。
いつの間にか、ボロアパートの住人全員がいない事に気づく。
え゛っ?!
必死に見渡すオレ。これだけの住人が集まりワイワイとしているのに何も起こらない事が不思議なぐらいだが、 突然いなくなってしまった。
オレは再度キョロキョロとしながら探すが何処にも居る気配も、見える気配も無かった。
何気にふと後ろを振り向くと、 つぶれ饅頭がテントを1人で撤収していた。
あっ、第一村人はっけーーん!。
オレは、つぶれ饅頭がいた事で、多少の不安が無くなり、ホッと胸を撫で下ろした。
「もう、終わる時間なのですか?」
オレは、なにか不安げに聞いてみる。
「台風が、近づいているんです。波が急に高くなってきているでしょう?。
海の近くで被害も大きいですからね。みんなさっさと帰りましたよ」
「えっ?。台風近づいていたんですか?」
「知らなかったんですか?台風はもう、来ますよ。日本海側は大荒れだそうです。
もう、雨もパラついて来ましたし・・・」
オレは暗くなった空を見上げる。
もう曇りすぎて、星さえも見えない。
その時、オレの目に何か降ってきた・・・
えっ雨?
まるで、目薬のような雨だ。
でも本当に雨がパラついてきている。
ってか、台風近づいているのを知っていて宴会していたのかよ!
「もうすぐ、嵐と豪雨と強風で大変なことになるから 、早く帰ったほうがいいよ」
「そ、そうですよね。台風接近中ですからね・・・」
オレは急いでボロアパートへと向かう事にした。
でも、あのボロアパートで台風は大丈夫なのか?
オレの脳裏に、かなりの不安が過ぎった。
けど、大丈夫なのか?一人で撤収なんて?
そっちも不安だけど、こっちの方もとても不安だ・・・
けど、住人たちは、あの一瞬でいったい何処に行ったんだ?
も、もしかして、黄金岬でイベントしていた二人が波を見て判断して、みんなに知らせたのか?
いや、そんなはず無い、波を見て咄嗟に判断していたなんて・・・
きっと、朝から台風の事は知っていたかも知れない。
オレは急ぎ足から、足を加速させてボロアパートへと走る。
こんなに一生懸命に走ったのは何年振りだろうか?
でも、過去に走っていた事なんて何ひとつ思い出せない・・・
いきなり、夏の台風に出会ってしまい、とまどいながら走っている。
大粒でオレに降ってくる大雨・・・
急がなければ・・・
急いで、ボロアパートに帰らなければ・・・
オレは必死に走り帰る・・・
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