第25頁目 ― 9 ― 七号室の住人 ―

   ― 9 ― 七号室の住人 ―


 階段を上がろうとすると、『 ガチャッ 』とドアの開く音が聞こえた。

 ふと左に首を向け、足を止める。


 オレは、医師が着ている白衣を身にまとった後姿の人物を目にする。

 屈み(かがみ)ながらオレにケツを見せている。

 えっ?、この人は、医者?学者? それとも趣味?コスプレ?

 医師の白衣を見ただけでは想像はつかないが、七号室から出てきたことは確かだ。

 何かゴソゴソと部屋から何かを出しているようにも見えた。


 ドアを『 バタン! 』と閉めた瞬間、オレの目に映る光景に唖然とする。

 えっ?!。え、ええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!。

 目の前に見えたのは、もの凄いアフロの髪型だった。

 お、おおおおおぉぉぉぉぉぉ!、物凄いデカいアフロの髪だ!。

 何て言ったら言いのだろう?・・・

 アフロを超えているアフロ?

 後ろから見たら扇風機にもみえる格好。

 ドアからやっと出てきた感じの、アフロ・・・

 それも、ウォーター・ブルーの綺麗に染められた、巨大アフロ。

 もし例えるのなら、気球?サイババ?

 い、いや、サイババを超えている、ふんわりとした・・・雲が乗っかっている感じのアフロだ。

 スラリとスリムな身体(からだ)に、まぁ180センチほどの身長だろう。

 一見、外人にも見える高い鼻に、りりしい顔と黒く大きなサングラス・・・

 なんかYOUTUBEで見覚えのある格好だ。確か昔いた、まるでクリスタル・キングにいたような人だ。いや、昔の井上陽水や吉田拓郎並み以上の髪型だ!。

 紺のスーツの上には、医師の白衣。

 いったい何している人なんだ?

 ここの住人って変わった人が多すぎる。

 いったい、ここの住人っていったいなんなんだwww


 七号室の人がオレに気づき近づく。

「おはようです。君が昨日引っ越してきた五号室の人だね?」

 周りには、あまりオレの名前が浸透していないらしい。

「えっ、はい。おはようございます。

            昨日、挨拶に行ったのですが留守だったもので・・・」

「わたし昨日は大学にいましたから、あなたが引っ越して来た事は知りませでした。」

 ん?。へっ?大学?

「だ、大学って?・・・大学に行っていた?んですか?」

 大学生ではないだろうな・・・まさか?

「ええ、わたしは大学で教授をしております。」

 えっ?おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ大学教授だったんだ!。

「きょ、教授なんですか??!す、スゴイですね!」

 すげーーー。大学教授を見てしまったよ。

 けど、こんなアフロで?

「今から『 現代における機械の進化と、未来におけるロボットは、ギャグでノリ・ツッコミが出来るのか? 』の講義に行くところです 」

 おいおい、難しいのか馬鹿げているのかハッキリしろよ!

 オレは、苦笑いでその場を乗り切る。

「周りは夏休みで、今日は日曜なのに大変ですね」

「ですね。でも仕事ですから、しょうがないですよね。 あっ、申し送れましたが、

 わたし七号室の『永遠眠 遥天(とわに ねむる)』と 申します。」

 げげっ!。また奇妙な名前に出会ってしまった・・・

「あっ、昨日、五号室に引っ越してきました。藤沢 優紀です。」

 思わず、挨拶返しをしてしまった。

 りりしい顔の、大学・・・アフロ教授。

 なんか奇妙な名前が集まっている、ボロアパート。

 こうも名前が面白いと、なんか、次に出会う人の名前が気になってくる。

「では、わたし急ぎますので・・・」

 永遠眠(とわに)さんは、部屋に鍵をかけ、なんか、袋に入ったどデカイ荷物を背中にかついで、ゆっくりと歩いていく・・・

 ま、まさか、あの荷物を講演に使うのか?

 まあ、なんて言うのか。

 とりあえず、称号は、『 アフロ教授 』としておこう。


 オレは、階段を上がり二階の廊下へと出た。

 そして、四号室だと思っていた、保池(ぼち)さんの部屋。

 部屋のナンバー・プレートには、確かに『 三号室 』と表示がしてある。

 まあ、どうにせよ。幻の四号室は目に見えなくても存在する?

 オレは、何度も三号室と五号室の間の幻の四号室の空間を確認しようとしたが、2時間と言う時間を無駄に終わらせてしまった。

 そうした、疑問を残しつつ、自分の部屋の鍵を開ける・・・

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