第57話 そうだ、正月はパラオに行こう
フィリピン勤務でも正月は休みになります。まあ、たいていの人は日本の家に帰ったりするわけですが、独身の私は奥さんや子供の元に帰る必要もありません。
とうぜん、長期ダイビングツアーになります。
いつものセブ最南端リロアンでもよかったのですが、まとまった休みが取れるのならちょっと足を伸ばしてみようかという気にもなります。
そうだ、パラオへ行こう。
パラオは世界屈指のダイビングスポットで、日本でも大人気です。ポイントの有名さ、おもしろさはおそらくフィリピンを上回るでしょう。
日本からでもそう遠くはありませんが、フィリピンからならもっと近い。
旅行代理店ともおなじみになっているので、後は手配をするだけです。
ちょっとうきうきしてきました。
ちなみにこういうとき、真っ先に乗ってきそうなSさんは、
「俺は家に帰るから」
うぷっ。奥さん、怖いんだ、この人。
でもまあ、それが普通の人間です。ただでさえ、仕事で海外に行っているのですから、たまの正月休みくらい、帰ってこないと離婚されちゃいます。
しか~し、ここで手を上げた人がいた。
「俺も行きたいっ!」
設備担当のOさんです。
あれ? あなたは家庭を持っていたはずでは?
Sさんも、「奥さん、だいじょうぶなのか、O?」とからかいました。
(いや、内心行きたくてたまらないんだよな、この人)
「だいじょうぶです。うちはなんとかなりますから」(断言)
リ、リアル釣りバカ浜ちゃんがここにいるっ!
(おまえがいうんかい? って、つっこみは禁止だ)
……い、いや、この人もダイビング馬鹿になってきたな(笑)。
もちろん、私としても異論はありません。ひとり旅もいいけど、気心の知れた仲間とのダイビング旅行は楽しいものです。
日本からパラオに飛ぶダイバーは山ほどいるが、フィリピンから行く日本人はめったにいない。
ナポレオンが、バラクーダが、マンタが待っている。
急流と断崖、洞窟の海、パラオ。
我々ふたりは魅惑の海に旅立つのでした。
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