第49話 ここはバベルの塔か?

 こうして新体制で始まった現場ですが、今回も施主がフィリピン人なら、ローカルの責任者にお任せして、余計な口を挟まなければ案外問題なく仕事は進んだかもしれません。


 しかし、このI所長の現場、よりによって施主は日本人、しかも工事監理専属の人がほぼ常駐状態で現場に居座るという体制でした。


 そのオーナーサイドの日本人。Iさん以上に年寄りです……、いや、お年を召されております。

 しかも頑固です。

 ついでに細かいです。

 おまけにけっこう短気です。


 だいじょうぶですか、所長?(完全に丸投げ)


 きょうも監理者(厳密に言うと違うけど、めんどくさいからそう呼ぶことにしよう)、なにやら所長に言ってきています。

 正直内容はまったく覚えていませんが、なにやら細かいことです(適当だなあ)。


「わかりました」

 I所長、返事はいいです。

 ローカル責任者のトトを呼ぶと、

「○×△、だぁあああ~っ!」

「?」

「だから、□●×だぁあああ~っ!」

 コミュニケーションが成立しません。

 そこでちらっと……。


 ふたりして、こっち見んなっ!


 しかたないので私が説明します。いい加減な英語で。

 しかしどんないい加減でも、とりあえず意味が通じる英語を耳にしたトトは、

「わかりました」

 と満足そう。


 ついでになんか言っていたので、それを監理者に説明します。

「ふ~ん、わかった」


 とりあえす、みんな意思疎通できたぞ、わーい。


 っていうか、この現場、やばくねっ!


 だってみんなの雰囲気が

「とりあえず、南野に言っとけばだいじょうぶ」


 ……いや、だいじょうぶじゃないぞ、きっと(笑)。

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