第39話 鳴り止まぬ拍手を叫ぶよ(意味不)


「そろそろ、帰るの」

メムタチアが、前触れなく帰宅宣言をした。

「ん、そうか」

神の世界に帰るんかな。


、なの」

「おお、またな」

手を振るメムタチアの姿が薄くなっていく。


そして、完全に消えた。


 なんというか、…色の無い出会いだった。

全く新キャラっぽさが無かったな。

まさか、文化祭イベントの途中で登場するとは。

だが、時間もつぶせた。

よしとしよう。


  先輩の劇ももうすぐだ。

そろそろ体育館の方に行くか。






 体育館に入ると、ごった返す生徒の波が目に入ってきた。

席の取り合いになってんな。

 まぁ、俺は…別に座らなくてもいいか。

壁に背を付けて、舞台の方を見る。


  壇上では、先輩のクラスの委員長が挨拶をしていた。

『それでは、ご覧ください!』

電気が消え、体育館は暗闇と静寂に包まれた。



  静かに曲が流れ始め、スポットライトが舞台の真ん中を照らし出す。

東先輩が、光に抱かれ姿を見せた。

 劇の元は、確か白雪姫だったか。

ウエディングドレスの様な衣装を見に纏い、先輩は語りだす。

 いつもの、おどおどとした声では無い、堂々と、凛とした声で。






 拍手喝采。

スタンディングオベレーションだ。

先輩たちの劇は素晴らしいものだった。

ストーリーも、衣装も、細かなところまで出来ており、一人一人の演技が真に迫っていた。

 その中でも、東先輩の存在感は一際大きかった。

ライトを浴び、演じる姿は体育館内の全員の心を鷲掴みにしていた。


 鳴り止まぬ拍手は、生徒たちの賞賛の声だ。

俺は、先輩が舞台裏に戻っていった後も両手を打ち鳴らし続けていた。







「ふぁぁあああ……!緊張したぁあ」

どべっと、机に突っ伏し大きく息を吐く東先輩。

「先輩。凄かったですもんね」

「うぇ⁉︎そ、そんなに変だったかなぁ…?」

「いえ、そういう事じゃなくて。褒め言葉ですよ。凄いって」


皆、特に男子は先輩に釘付けだったからなぁ。

「あ、ありがとね。見てくれて」

「そりゃ、見ますよ。東先輩の劇ですもん」

しかし、先輩は途端に、俯いてしまう。

「わ、私の劇というわけじゃ…」

「でも、主役ですよ。綺麗でした、先輩」

「うぅぅうぅぅ………!」

 お、これは照れてるのかな?

やっぱし、可愛いなぁ。先輩は。

壇上での凛々しい先輩も良いけど、俺にとってはこっちの先輩の方がしっくりくるな。



「じゃ、行きましょうか。先輩」

「う、うん。よろしく、ね?」

 そうだ。

今から、俺はヘブンに行く!

天国に到達した彼方になる!



ご褒美タイムです。









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