第38話 ロリッ娘好きは御覚悟を・・・なの!


  夏の熱気に負けないくらいのリア充感!

それが今日こんにちの高校には、溢れていた!

溢れ出していた!!


 文化祭だっ!!

Culture Festivalだっ!!


 今、生徒会長の挨拶が終わり、文化祭開催のゴングが鳴らされた。




「よしっと、んじゃ、何処行くかな・・・」

つっても、別にないんだよな。

行きたいとこ。

 先輩の劇はまだ先だし・・・。

今は9時だから、・・・・・・あと、5時間もあるじゃんかよぉぅ。


 それまで、部室にでもいるか・・・。






 暇だ・・・・・・。

部室に来たは、いいものの。

絵を描こうにも、シャーペン忘れたし、取りに行くのも・・・面倒。


 3年生の先輩たちの模擬店で、盛り上がる北門を窓から見下ろす。

結構繁盛してるのな、どこも。

あ、コロッケの匂い。

 腹、減ってきたなぁ。


「じゃあ、これ食べればいいの」

「うぉぉぉう!!?」

 いきなり、隣から発せられた声に驚く。

確かに、誰もいなかったはず・・・。


 振り返ると、そこに・・・あれがいた。

あれ。

なんだ。

頭が混乱して、出てこない。

ええと、そう!

美少女ってやつ!


 あれ?というか、この子、銀髪。

生徒。銀髪。ダメ。

生徒。違う?

頭。混乱。考えられない。


「混乱してるの」

「えぁ?あ、ああ」


 少女が首をかしげると、肩にかかるまで伸びている銀髪が揺れる。

よく見ると、この子着ている服もウチの制服じゃない・・・・・・。

小柄な体躯を、ドレスみたいなもんで包んでいる。

 

「落ち着いたの」

「あぁ、悪いな」

いやぁ、焦ったわ、マジで。

「んで?君は・・・?」

まぁ大体予想はついてるんだけど。

この子の纏う雰囲気っつーか、似てるんだ、あいつに。


「私、女神、なの」


やっぱし・・・。

「お名前は?」

「メムタチアなの」

・・・国名みたいだな。

「それでその、メムタチアさん?が俺になんか用か?」

「メムタチアなの」

・・・・・・・・・。

「メムタチアさん」

「メムタチアなの」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

「メムタチア」

「・・・ん」

め、面倒くさい・・・!


「メムタチア。俺になんか用があったのか?」

「んーん」

「え!?ないのかっ!?」

「ん」

 な、なんで、来たんだ?

「少し、興味あったの」

「ん?」

「アロラ、下界、きたの。だから・・・」

 なるほど、アロラとも知り合いか。


「でも、来たら、ここ、むわっとしてたの」

「まぁそりゃ、夏だからなぁ」

「特に、ここ、暑かったの」

「リア充感がなぁ」


 椅子に座り、足をプラプラさせながらメムタチアは続ける。

「でも、ここはあんまり暑くなかったの」

おい、それはあれかっ、ここにはリア充感ゼロってことか!


「名前・・・」

「ん、ああ!確かに言ってなかったか

俺は、富士見彼方だ。彼方でいいからな」

「彼方・・・」

「ああ、彼方だ」


 何度かその響きを反芻し、そして、彼女は微笑んだ。


「よろしく、なの」

・・・!!

「ああ、よろしくな」




 先輩の劇まで残り、4時間。

暇せずにすみそうだ。





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