第37話 夏って、暑くないですか??最近ヤバくないですか?(どうでもいいわ)

 

 「お兄ちゃぁん」


 文化祭を2日後に控えた今日。

夕食を食べようと1階のリビングのドアを開けると開口一番、妹の愛音が声をかけてきた。


「なんだ?どうかしたか?」

「うん、お兄ちゃんの高校、明後日からだよね。文化祭」

「ああ、そうだけど」


 まぁ、こういうことだ。

『文化祭、私も行くから、お兄ちゃんとアロラさんの描いた絵を見に行くからー』

まぁ、愛音に来られるのは別に嫌じゃないし、いいだろ。

母さんも来るっぽいけど。

1日目は、生徒以外は保護者なら入れる。

2日目に、一般客も入れるようになる。

うちの文化祭はそうなっている。


 東先輩と一緒にいるところを見られるのは嫌だから、愛音達には2日目に来るように言っておいた。




 まぁ、そうこうして、文化祭前日になる。






 「彼方彼方ぁ!ほら!」

なんだバカ田。

うるせぇな。


 《マリオVSクッパ》の絵を、階段サイズに切り離していると、山田が呼んできた。

山田がデカイ紙を見せつけてくる。

「なんだ、よ・・・・・・?」


 見て、まず驚いた。

その紙には、背景を赤色で塗りつぶしたその紙には、マリオのキャラクター達が描かれていたのだ。

「え、なにこれ・・・・・・?」

隣で、天童とアロラも驚きの声をあげる。

 


 山田の隣で、川崎姉妹や、鍵浦や、他の皆が自慢気な顔をしている。

「へっへーん、気づかなかっただろ?俺らが描いたんだぜぇ!」

え、マジでか。

「まぁ、お前らみたいに、上手くはないけどよ。ほら、階段ってさ 、マリオとクッパだけじゃ、埋め尽くせないじゃん?最初はそれでいいってことだったけど、お前らばっかに全部任すのもなって思ってさ」

山田はそう言って頭をかく。


 「す、すごいですっ!皆さん!」

アロラがまだ、驚きの混じった声で言った。

「う、うん。ホントすごいよ!というか全く気づかなかった・・・!」

天童もだ。



「ずっと、隣で描いてたんです、よ?やっぱり、私達の影が薄いから・・・・・・・・・」

「そうです、ね 。私たちなんて所詮道ばたに落ちてる少年雑誌ぐらいの価値しかないんですね・・・」


「いや、卑屈すぎるだろ!」


 川崎姉妹の、発言に山田がつっこみ、クラス中で笑いがおきる。



 ああ、なんだこれ。


 不覚にも、・・・泣きそうになった。

たかが 文化祭の展示物。

だけど、このクラスで作った初めての“もの”なんだ。



 ・・・・・・・・・というか、雑誌って大体500円だよね。

     安くて、250円?






 そして、俺達は階段アートを切り離し、階段に貼り付けた。

ちょっとな事では破れないように、透明で頑丈なテープで。


 いつも、歩く階段だ。

でも、その時下から見上げたその場所は、夏の日光に照らされて、一段と輝いて見えた。

「これで、明日は・・・」

「文化祭、ですね」




 暑く、なってきたな・・・。

聞こえてくるセミ達の声は、それぞれの種で、歌いあい、来る夏を祝福しているようだった。


 「なに、キザなこと言ってるんですか」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



 「うるせぇやい!!」

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