第20話 女神への想い

 飯盒炊爨に続き、夕方からの校歌練習を終えた俺達は、昨日も世話になった部屋に戻ってきた。

 

 まぁね、学校としては、入学当初のここで校歌を覚えさせるのはいい判断だと思うんだけどね、なんで合宿に挟むかな・・・。

思いながらも自分の布団を敷く。

もう、すでに眠たいわけなんだが・・・。

まだ、風呂に入らなければならないし、班長会議とかいうのもあるし、しばらく寝れそうにないな。

 

 30分後には俺達のクラスが風呂に入る時間だ。

下着や着替えをまとめていると、同じ部屋のヤツが声をかけてきた。

「あの、富士見くん、だよね」

今まで話したことが、というか名前すら知らない男子だ。

「ああ、彼方でいいよ。んで、君は?」

「ああ、うん。じゃあ彼方くん。僕は天童てんどう真崎まさき。君の2つ前の席なハズなんだけど・・・。まぁいいや。それでね、え、えと。君に聞いておきたいことがあるんだけど・・・」

 少し言いずらそうに、そいつは言った。


「君とアロラさんって、・・・付き合ってたり、するの?」

「・・・・・・・・・んあ?」

付き合・・・・・・・・・?

「いや、言ってたろ?俺とあいつは従妹で・・・」

「でっ、でもっ、従妹でも結婚できるよねっ!!」

グイッと体を、乗り出してくる。

「い、いや、それは確かにそうだけどさ・・・」

「どっどうなのさっ!?」


 ・・・はぁん、つまり、こいつはあれだ。

あの女神様に一目惚れしちゃったわけだ。

まぁ、顔はすげぇ整ってるからなぁ。

基本的に、全員に優しいしな。

「・・・大丈夫だよ。俺達は本当に、絶対に、断じて、決して、付き合ってるわけじゃないから」

「そ、そっか」

彼は、心底安心したように胸をなで下ろした。

 天童、だっけか。

女神に恋するとは、素晴らしい経験を。



 そして、俺達は風呂に入り、班長は班長会議なるものに出席して、消灯時間を迎えた。


 今日は、中々充実してたんじゃ、ないか・・・?

カレーは美味かったし、まぁ校歌練習はともかく。

そんなことを考えながら、眠りにつく。


 夢に、カレーが出てきた・・・。


こうして合宿2日目が終わり、そして最終日だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る