まゆみのマーチ

 子どもの心情を描くことが多い作者が、自身の作品から選んだ自選作品集『まゆみのマーチ』を読んでみました。


 今回も子どもがテーマ…かと思いきや、思春期の子どもを持つ親の話や、昔子どもだった人に焦点を当てた話もあり、全ての人に通じる短編集になっていました。

 では、作品の紹介にうつります。


「まゆみのマーチ」

 話は、息子について悩みを抱えている幸司と、その妹で歌が大好きだったまゆみとの会話で進んでいく。

そして、二人は母親の病室で、彼の息子・亮介の話を始める。

―ストレスで学校に行けない息子を追い詰めるようなことはしなかった、つもりだ―

―あいつを追い詰めたつもりはないんだ。言い訳の言葉がぐるぐると巡る。―


 小学生の頃、まゆみはいつでも歌ってしまうためにマスクをつけさせられていた。マスクを外すと発疹ができ、そうして大好きな学校に、行けなくなってしまった。

―ひとに迷惑かけるんは、そげん悪いことですか?―

 まゆみの母は、頑張れも言わず、まゆみの先を歩くこともなく、ずっと並んで歩いてくれた。母が子どもたちに、伝えたことは…。それを聞いた幸司が取った行動は…。

 どんなに、大人が子どもを、言葉で追い詰めるのか、逆に救えるのかが分かる作品でした。


ちょっと長くなってしまいました。


「ワニとハブとひょうたん池で」

 近所でワニが出たとニュースになったワニ好きの少女・ミキは、ある日突然ハブになった。ハブとは「省く」や「村八分」からきている言葉で、無視していないものとして扱うこと。特に理由はなく、ゲーム感覚で始まるハブ。皆刺激が欲しいだけだと言い聞かせながら、家でミキは明るい娘を演じ続ける。

―プライド。匿名の手紙を送ったコを、わたしは絶対に許さない。―

 多感だったあの頃、今のいじめの本質に迫る一作です。


「セッちゃん」

ある日、娘がセッちゃんという転校生について話始めた。セッちゃんは皆に嫌われているらしい。

―同情とかって、本当は残酷なんだって、よく言わない?―

―人の好き嫌いなんて、個人の自由だもん―

子供の世界の正直な姿、大人が子供に求める空虚な理想を浮き彫りにする一作です。


「カーネーション」

母の日。

電車の網棚に置かれた赤いカーネーション。それを見て、3人の男女が自分の人生について考える。

―赤いカーネーションの花言葉は「哀れな我が心」―

―白いカーネーションの花言葉は「純愛」―

電車に乗っているわずかな間、彼らは家族のことに想いを馳せる。カーネーションをきっかけに行動を起こす。

彼らがたどり着く駅は幸せなのだろうか…。

母の日を通して見える、家族の絆を描いた作品です。


「かさぶたまぶた」

子供のことなら何でも分かるという政彦は、最近子供の異変に気付かない自分に焦っていた。ある日、娘の様子がおかしいと妻から相談されるが…。

―あの子、完璧主義なところがあるからね―

ちょっとしたことで自信を無くしたという娘は、政彦には知られたくないという。

―あなたには言えないわよ―

妻の一言、息子の反抗に、政彦は「ポキッ」と折れた。間違わないように、正しくあろうとしていた彼は衝撃を受ける。

娘が、息子が、そして政彦がとった道は…。

親なんだから、と分かったつもりでいることの恐ろしさ、子供の繊細な心を親の期待がいかに傷付けるのかを暴き出しています。


「また次の春へ」

主人公のマチコさんは、かつて住んだことのある東北で大きな地震が起きたことで、住んでいた頃のことを思い出す。アルバムを見て、福島に赴き、次第に記憶が甦ってくる。楽しかった思い出、親友との約束、そしておまじない。

マチコさんの思い出は、あることがきっかけで"今"に繋がっていることを知る。

全日本人に読んで欲しい、感動の作者書き下ろし小説。


以上です。

長くなってすみません。

どれも、今の子どもだけでなく、大人にも読んで欲しい作品です。

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