第38話:競作世界での立ち位置

 牛丼小説については、さんざん書いてきました。


 ファーストフード化するのに必要な要素は、「お約束」「共通の前提条件」、それらはある意味で「集合的無意識」と言えるものかもしれません。

 つまり、奥ではつながっているものです。


 角度を変えれば、これらは「共通要素(設定)を持った競作」と言えるのかもしれません。


 テーマを決めて競作するのと、基本的な要素は一緒です。

 同じ素材で調理方法や味付けを変える。

 そう考えると、それほどおかしい現象ではないのかもしれません。


 では、その競作に参加するのか、しないのかです。


 まあ、参加しないのであれば、今まで通り普通の公募で戦っていけばいいわけです。

 しかし、私としては、その世界に参加したかったというのもあります。


 一方で、流行にただ乗るだけというのは、実験大好きの私としては今一つ不本意でした。

 どうせなら、流行に呑みこまれるのではなく、流行を呑みこめないだろうかと大それたことを考えたのです。


 受け入れる部分は、異世界、チート、ハーレム等の人気設定です。

 受けいれない部分は、ファーストフード化された部分です。


 例えば、異世界に転移。

 その理由は、「神様が」とか「事故で気がついたら」とか、ほぼ理由として成り立たないものではなく、ちゃんと理由付けをしてみよう。


 例えば、チート的能力。

 これを持っている理由も、「神様が」「知らないうちに」とかではなく、本人がきちんと理由を持って手にした能力にしてみよう。


 例えば、ハーレム。

 出会ったばかりの女の子が、なぜか好いてくれて……ではなく、ちゃんと心理的な動きがあって好きになってもらえるようにしよう。


 表面上は、流行ものだが、根底は別のところにつながるようにしよう。


 そう思ったのです。


 肉料理というテーマがあります。

 調理方法はいろいろとあります。

 おいしくできた料理は人気が上がります。

 だから、みんな料理に一生懸命です。


 でも、基本はどれも肉料理です。

 そして、その肉がどこから送られてきた肉なのか、どんな肉なのかよくわかっていないのではないでしょうか。


 もちろん、素材から吟味している調理人も見受けられます。

 どうせ競作するなら、そういう人たちと戦いたいと思いました。


 「ブラックボックスを使うのは嫌だ」と言って、拒否して終わりではつまらない話です。

 どうせなら、そのブラックボックスを少しずつでも壊して使ってみるのはいかがでしょうか。


 そう考えると、意外にアイデアも出てくるものかもしれません。


 私の作品は、そういう作品なのか?……と聞かれれば、それはとりあえず自分棚です!(笑)

 ただ、目指していたことはまちがいありません。

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