2月10日 村沢寧子(村沢直哉の妻)「土産」
私の夫は労働組合の書記長を務めている。
そのため一ヶ月に一回は日帰りもしくは一泊で学習会や会議に出席していて、昨日今日も一泊かけて春闘絡みの学習会に出かけていた。
組合活動は公務員の宿命だ。管理職に就かない限り多かれ少なかれ仕事が回ってくる。
真面目な性格の夫がそれを回避するとは考えられず、むしろ役付きは覚悟の上だったので、休日家を空けることに関しては諦めていたのだが、
「……あなた、これは?」
「マスコットキャラのハンカチだよ」
――律儀に買って来てくださるお土産の微妙なセレクトに関しては閉口している。
「小さな女の子向けのキャラクターだと衡平も学校に持って行きづらいだろうが、これくらいならば普段使いにできるだろう」
高校生の息子に持たせるにはどちらも非常に難儀ですときっぱり言い放つには夫の笑顔は眩し過ぎ、だから、私は、
「そんな衡平になんてもったいない。私が使わせてもらいますよ」
と微笑むにとどめている。
ああ、次もこの人は不可思議な土産を携えてくるのだろうなと思いつつ。
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