第113話 作戦会議。

 どう動くかを決めるために一旦僕は宿に戻った。

 人目につかずゆっくり相談するにもすぐに動ける位置的にもこの下町の宿は都合が良い。

 宿の従業員に朝までゆっくり寝るので明日の昼までは無用なので来ないよう言い置いて部屋に入る。

 さらに結界を施した上で亜空間修行場にどこでも…じゃなく亜空間ドアと呼ぼう、を繋げて設置した。

 亜空間に入って確かめると今日は砂漠だった。

 収納からテントを出して日陰を作り、焦る気持ちを抑えつけてスパイスを使ったチャイティーを淹れる。

 急いては事を仕損じる、だよね。


「さて、と…先ずは現在の状況を把握かな」

「ヂュー…カインはカイン=ナフィヨル第三王子。謀反の嫌疑あり」

「…ぎゃわ」

「うん。あとは………何も知らないな、僕」

 改めて考えると全然カインさんの事を知らないと気づいて愕然とする。

 知っているのは流れの傭兵みたいな生活してたこと、これはガザシ父さんに聞いた。

 チャラそうに見えるけど実は剣が強くてカッコ良くて優しいこと、これは一緒にいてわかったこと。

 そしてこの国の第三王子らしい…ついさっき知ったばかりだ。

 ん?てことは教会で会った大公閣下って王子…カインさんの大伯父なのか?

「チュチュ!今こそジブンの本領発揮や主よ!命じてくれればジブン調べてくるのじゃ」

「モリーなら余裕でできそうだね…。でも、僕は自分で」

「ヂュッ!ジブンは主の使い魔や。主の力そのものでもあるんじゃ。チュー、それにジブンが調べとる間に主は修行をすると効率ええやろ?」

「ぎゃうぎゃう!」


 自ら動くのだと決めたすぐ後にこれで葛藤はあったけれどモリーとカルモの真摯であり真剣な目を見て頷いた。

「…うん。そうだね。じゃあ僕は修行、魔法の腕を磨く。モリーは調査を…何故カインさんに嫌疑がかかったのか、本当にそういった動きがあるのか、真犯人は誰なのか…」

 指折り数えてひとつずつあげると横からカルモが物理的に首を突っ込む。

「ぎゃうぎゃぎゃ」

 訴えを何となく読み取って驚いた。

「えっカルモも手伝ってくれるの?でもカルモは使い魔じゃないんだし…」

「ぎゃわ、ぎゃーうっ!」

「…そっか、友達だもん、ね。ありがとうカルモ!」

 まだ幼いドラゴンのカルモからはっきりと言葉で伝わることはないんだけど、何故か友達だから助けたい、という意思は強く伝わってきた。

 使い魔契約をしていないのに精霊王の雛を頼るのはどうかと思ったけれど当のカルモからの強い意思で僕は手を借りる事にする。

「じゃあカルモは羽っ子たちと情報収集かな。モリーと協力してね」

「ぎゅあ!」


 方針が決まった僕らは誓いを交わすように一斉にチャイティーをあおる。

「カインさんを連れて帰る!そのための準備を始めよう!」

「ヂュヂュー!」「ぎゃお!」

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