第85話 モリモと一緒。

 モリモにモリーと名前をつけたら小さくなった魔方陣がカッと光った。

 目を閉じるが閃光にまぶたをかれる。

 残像がなくなってそっと目を開いてみると額に焼き印みたいな魔方陣が残ったモリーが僕を見上げていた。

「ヂュ?大丈夫か主」

 二重音声みたいだけどしっかり聞こえたモリーの声に目を大きくみはる。

 だってこれは。

「ああ、しっかり成ったね。俺は彼の護衛のカインだ。よろしくモリー」

「ヂュヂュ!護衛どの、よろしくお願い致す。ヂュー…さすが我が主や、既に護衛をお持ちか」

 カインさんとも小さな手で握手して、話をしてる。

 契約が成ったことでモリーの声は僕以外にも聞こえるようになったらしい。


 詳しくは追々、ということで省かれたけどとりあえずモリーは実声と念話を使い分けられるようです。


 ネズミは弱くて短命な代わりに数を増やす方で種の存続をはかったって聞いたような気がするけども、異世界では違うみたいで。

 モリーいわくモリモは強い魔法は使えないけど長生きはするんだって。

 なんとモリーは千年ほど生きたおじいちゃんだそうな。

 なのに若い声だし毛皮も衰えたようでなくつやつやしている。

 なんかエルフみたい?しょたじじ…いや、皆までは言うまい。少年て言うより青年ぽいし。

 あとどうやらモリモ的に砕けた言葉は関西弁に近い。広義で。あくまでも広義で。


「ヂュヂュヂュ。年経たおかげで他のモリモよりは色々出来るで、これから何でも言うたって主。ヂュー、ジブン一応モリモのおさやからの!」

「ええ!モリー、モリモの長なの?」

 モリーの言葉には僕だけでなくカインさんも驚き呆れたような事を言った。

「他のモリモより魔力を多く感じたのはそのためかい」

「いいのかな…?」

 長をこき使うみたいで気が引けるよ、と呟くとカインさんが肩を叩く。

「そんなに気にすることはないと思うぞ?」

 ぺしぺしと頬を叩いてモリーが主張する。

「ヂュヂュー!せや、ジブンら普段何かやっとるわけでなし。気ままに生きるモリモやで!ヂュッ!むしろ主の役に立てるのが嬉しいんじゃ!」

「彼が自ら望んだのを、否定しないでやってくれ」

 一人と一匹の言葉に僕は頷いた。

「カインさん…モリー、わかったよ。伝言したいときはよろしく!」

「ヂュウ!いえっさーじゃ!」

 いえっさーて…やっぱり異世界言語って謎だ。


 昼食を終えた僕とカインさんはいいとして、モリーのご飯は僕の魔力だ。

 どうやって与えればいいのかと思ったら毛並みを撫でることで自然と魔力は得られると言う。

 モリーのもふもふを楽しみながらご飯をあげられるなんて一石二鳥じゃないか!

 気づけば動物の壁がなくなり馭者さんが汗をふきふき出発すると声をかけてきた。

 増えたお供をつれて、僕らは次の町へ向かう事になった。

 荷馬車でカインさんに抱えられ、僕はモリーを撫でながらの道行きだ。

 終始ご機嫌であったことは明言できるよ。

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