第67話 魔法部隊長さんはナイスミドル。

 今日は見回りが終わったら銭湯で湯沸かしが仕事の予定。

 住民登録してなかった僕のぶんって多分無いからね、おねえさま方の狂騒的なやり取りをスルーして街を門に向かって歩いてた。

「もし、そこの自警団の方…」

「はい?」

 声をかけられて振り向いたら厚手のローブを纏った、ガザシ父さんと同じくらいのおじさんがいた。

 落ち着いた赤色の長めの髪を後ろへ流し鉄錆のような赤みがかった茶の瞳のおじさんは隙のないかっこよさで、仕事ができるインテリに見える。

「貴方がこの街を救ったという方ですか?」

「えっ?」

「…デリカネーヤ…」

「えっ??」

 まさかのお知り合い!?


 立ち話もなんだから、なんて言ってもしゃれた喫茶店なんかないので教会の方へ。

 青空食堂と化している教会前の比較的開けたところには、持ち寄られたテーブルや椅子がご自由にどうぞと置かれているのだ。

 そこへ座るようにすすめて僕はマオさんに食器を借りて水をいれる。

 まだお茶をいれる余裕はないのよ。

 ただの水でも飲用可能な水があるってのはありがたいもんなんですけど、ちょっとばかしお茶が恋しいこの頃。

 水回りはなんとかなったしお菓子もなんとか少しは作れたから、次はお茶とかかなー?

 そんな暢気なことをのほほんと考えながら水を運んだ。

「どうぞ、えとデリカネーヤさん?」

「ありがとうございます」

 聞けばこのナイスミドルなおじさまん、あの、王都からの使節団の上役で魔法部隊長であるらしい。


 配膳、まあ水だけなんだけど一応、を終えて僕もカインさんの隣に腰を落ち着けるとおもむろにデリカネーヤさんが口を開く。

「あなた方がこの街を救ったと聞きまして、危機管理体制などの参考にしたくお話をうかがえたらと思いまして…」

 僕らが関わっていることは殆どの街の人が知っている。

 でも詳細についてはガザシ父さんとカインさん、それに僕だけだ。

「あーえっと、それはガザシ父さ、ガザシさんから?」

「ええ実は昔馴染みでして」

 微かに笑みを見せたデリカネーヤさんに僕はちょっと胸が高鳴る。

 王都から来た上の役職についてるデキル男に昔馴染みと言われるって、もしかしてガザシ父さん結構凄い人なのかな?

 いや、勿論助けてもらった時ガザシさん凄いとは思ったけど普段のパパ呼び要求とか見てたらなんかこう、ね?


 なんてなこと考えてガザシ父さんの武勇伝とか聞けるかなとwktkしてたら先を進めるようデリカネーヤさんが口を開いたんだけど。

「それで、当時の事を」

「デリカネーヤ、それだけか?」

 割って入ったのはカインさんの固い声で。

 睨み付けるカインさんの鋭い視線をデリカネーヤさんは大人の余裕で受け止めているけど…こちらも隙を与えない目をしていた。

 あの、二人の間に火花が散って見えるんですけどー。恐いんですけどー。

「ええ。まあそうですね」

 なんということもないように軽く言われ、カインさんが少しほっとしたように視線を緩めた途端。

「…今日のところは」

 デリカネーヤさんがぼそりと落とした呟きに、どうして僕は気付けなかったんだろう。

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