第46話 就職は突然決まることもある。

 僕の魔弾はオーバーキルだったけど、それ以上にこの街であんな大物は出たことがなかったらしい。

 元々自警団にしても小物を追い払う程度で、基本はチンピラなどに対応するのがメインなんだって。

「坊主はこの街にとって英雄になったんだからな」

「えええ?!そんな、立派な人間じゃないですよ僕なんて…まだ仕事も満足にできない子供なんですから!」

 誉められて嬉しくないはずがない。

 ただちょっとだけガザシさんの腕を治しきれなかったのが悔しい。


「なんだ坊主仕事ねえのか?」

「あ、はい。まだこの街でできることを探してる途中だったんで…」

 右肘を見つめて返事が遅れたけどガザシさんは気にせず続きを口にする。

「…だったら、なあ。これは提案なんだが、うちで働かねえか?」

「ガザシ!?」

 さん付けも忘れて止めに入るカインさんのとがめるような声も耳に入らない。

「え、…え?」

 夜店?…それとも。

 戸惑う僕に慌ててすぐじゃないと言う。

「一応考えてみて欲しいってことだ。毎日って訳じゃないし俺みてえに副業してもいいしよ」

「…自警団に、ですか」


 もとの世界であれば即座に無理というところ。

 そもそも労働基準に引っ掛かるだろうな。

 けれど今は違う。

 僕くらいの年になると独り立ちするのが普通な世界。

 働かなければ食べていけないのが当然なのだし。

 バイトさえしたことがないから見学と言って色んな職業を見てきたけど、はっきり言って自分に合った仕事なんて全然わからなかった。

 ただ得意なのはたぶん魔法だ。

 イメージできるものなら何でも全部できちゃうんだから。

 そう考えるとこれは、渡りに舟、なのかな?

 僕にとって、か な り 魅力的な誘いだ。

 ラノベ知識から考えれば隠さないと、なんて頭では思ってもやっぱり魔法を使ってみたい好奇心があるのが正直なところ。

 中二病ロマンは捨てられなかった。


「ああ、何日かおきに一緒に見回りをしてもらいたい。魔物が出たら対処する要員としてな」

「じゃ、じゃあ…僕でもいいのなら、やってみたいです!」

「いやこっちから頼んでんだ、よろしく頼むぜ新人団員!」

「はいっ!」

 僕はガザシさんの左手をがっちり握手した。

 こうして僕の初めての就職は突然思いもよらぬ形で決まったのである。

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