第27話 夜の市場へ。

 遅い昼食を食べた後で見学して店を出たらもう夕方だった。

 朱に染まる町並みを見ていると郷愁に襲われてちょっと涙が出そうになる。

 僕は意識して明るい声でカインさんに聞いてみる。

「あの、次はどこを見学…」

「今日は夜市がたつから、それを見て終わりにしようか」

 被せるように言われてしまってビックリした。

「え、でも、」

「まだこちらの世界に来たばかりだろ?頑張るのもいいけど焦ってばかりじゃ身に付かないと思うし、ここの夜市は有名で見る価値は絶対あるから」

 気遣ってくれるカインさんに僕は複雑な思いを呑み込んで頷いた。


 どこか空回りする自分に気づいていてもどうすればいいかわからない。

 情けなさにうつうつとした気分はあっという間に消えてしまう。

 だってすごい!

「すごい!きれい!」

「ははっ、だろ?観光名物なんだよ」

 自慢気に胸を張るカインさんに頷きながら視線は街の夜景から離せなかった。

 日本の夏祭りのように身近な雰囲気ながら、すべてが違う。

 灯りは自ら浮遊し明滅を繰り返す。

 街の路地を埋め尽くすたくさんの露天は食べ物飾りもの玩具の他、怪しい魔方陣の描かれた紙や小さな光る魔石など日本にはないものが並ぶ。

 すぐに僕は夜市に夢中になっていた。

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