第十二幕・シシの恩返し

0――序幕


   0.序幕プロローグ




「こんちゃー、えーと、シシちゃんだっけー? お見舞いに来たよー」


「――あんたは確か――浪川なみかわ奈津なつ?」


「そーそー、なっちゃんでーす。いつぞやの家庭科室では迷惑かけちゃったねー。具合はどーお? そろそろ退院できそー?」


「――そうね――おかげさまで明日、退院予定よ――飲んだ毒物は少量だったから、一週間くらいで治ったわ――」


「そっかー。いやーそのことでさー、うちもハラハラしたんだよねー。ほら、うちってシシちゃんが勘違いされた『私市きさいち油見ゆみ』ちゃんと仲いーからさー。代わりに一言ワビ入れたかったんだよねー」


「ああ――私市さんね――名前だけは聞いたことあるけど――」


「その子、一組の首席優等生なんだけどー、性格キツイってゆーかツンケンしててさー。そのうちシシちゃんにもツラ合わせて、彼女の口から謝罪させるよー」


「え――別にそんなことしなくても――」


「いやー駄目っしょー、こーゆーのはきっちりケジメ付けなくちゃー。先日の事件を受けて、本人もバツの悪そーな顔してたからー、近いうちに連れて来るよー」


「――あんた、何か企んでる?」


「へ? いやいやーそんなー、うちは単に平穏無事な学園生活を営みたいだけだってー。クラスメイトの周辺がギスギスしてるのって暮らしにくいじゃーん? それよか、みんな仲良く、懇意に、フレンドリーな方が過ごしやすいっしょー? それだけだよーん」


「――どうだか」


「本当だってばー。ね? こーゆーのも一つの縁だと思わない? シシちゃん友達居ないみたいだしさー。うちが二番目の友人になったげるよー。一番目はルイちゃんね」


「――あんたが――あたしの友達に?」


「だってほっとけないじゃん、救いの手を差し伸べたくなる感じ? そー思わせる何かがシシちゃんには宿ってるんだよー。ルイちゃんが心惹かれるのも判るわー」


「――そ、そうかな――」


「そーよ。そーすればー、私市さんも、りょーちゃんも、シシちゃんの友達になれると思うんだけどなー?」


「友達――――……」




「欲しーでしょ、友達? だから仲良くしよーよ、シシちゃん。?」




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