《07-10》

  

                    ※ ※ ※

 

 

 全て作戦通り。

 

 偽者を倒したところで意味はない。

 まろみを支配者として認めているのは生徒達。

 生徒達に本物のまろみを認識させねばならない。

 

 そこで立案した作戦はこうだ。

 

 全生徒が集まった所で偽者のまろみを追い込み、絶対支配者という仮面にヒビを入れる。

 そこで本物のまろみが登場、真のまろみという存在をアピールする。

 

 その最終目標に向かいプランは進められた。

 

 まず、本物のまろみが脱走した事、そして寮で『ハルベルデ』に接触した事をほのめかす。

 しかし、寮内は戦闘禁止エリア。迂闊に手は出せない。

 そこで函辺に無謀なルール変更を提案させ、それを凛華が正論で諌める。

 

 本物を捕らえたいという衝動、偽者であるという後ろ暗さ、この二つの要素が選択するのは正論よりも謀略であろう。

 というのが凛華の予想だった。

 

 結果、偽者のまろみは函辺の提案を受け入れた。

 彼女の狡猾さが仇になった。いや、凛華が見事に逆手に取ったと言うべきだろう。

 

 集会でルールが変更されたタイミングで、騒ぎを起こし生徒達を混乱させる。

 これは『ハルベルデ』の役目だった。

 この手の訓練も十分に受けている桔梗家の特殊親衛隊は、難題をクリア。

 爆薬と発煙、声による扇動でパニックを効果的に演出した。

 

 混乱を収拾する為に、絶対支配者の力に頼るのは必定。

 そこでマイクを切り、偽者を追い込んだ。

 

 そして……。

 

 

                    ※ ※ ※

 

 

「まろみ様がもう一人?」

 

 生徒達の間でざわめきが起こる。

 

 制服と軍服。二人のまろみ。

 その状況は生徒達のキャパシティを越え、どう反応すべきかすら見失わせていた。

 

「考えるまでもないであろうが!」

 

 制服姿のまろみが手にしたマイクで一喝する。

 

「真の支配者たる者は常に威風堂々としているものだ。ぼんやり呆けているこやつが、本物に見えるのか? 貴様らの目はそれほどまでに腐っておるのか?」

 

 そっくりの顔つきだが、身長差がかなりある。

 どう見ても小柄な制服のまろみが頼りなく思える。

 だが、その落ち着いた態度は、絶対支配者の貫禄を十分に備えていた。

 

「なにをぼんやりしておる! 余を讃えるのだ!」

「まろみ様、我らの指導者」

「まろみ様に栄光あれ」

「もっと! もっとだ!」

 

 まろみが両手を大きく広げて煽る。

 

 

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