《06-24》

「いえ、決してそんなことは」

「ならば復唱せぬか!」

「失礼しました!」

 

 素早く踵をそろえて、額に手を当てる。

 

「御形 凛華。今までどおり、いえ、今まで以上の忠誠をもって、まろみ様にお仕え致します」

「ふむ。期待しておるぞ」

 

 大仰に頷いた。

 と、ふうっと大きく息をついて、床に座り込む。

 

「まろみたん」

 

 心配そうな春乃にちろりと舌を出した。

 

「不思議だね。自分で自分のマネするなんて」

「ううん。そっくりだったよ」

「だって、私なんだもん」

 

 精一杯の強がりなのだろう。その足は不安そうに震えていた。

 

 二人のやり取りに、凛華と函辺が苦笑を交換する。

 

「一本取られちまったな」

「そのようですね。すっかり騙されてしまいました。ですが二言はありません。私の持てる力の全てで、まろみ様を支えましょう」

「あの、ありがとうございます」

「凛華さんがいてくれれば百人力ですよ」

「じゃあ、自分ならどのくらいだ?」

「もちろん、ハコベさんも百人力ですってば」

「ちっ、こいつと同程度かよ」

「それはこっちの台詞です。まったく」

 

 下らない冗談に声を揃えて笑った。

 

「しかし、二百二と四千九百九十六では、戦力差があり過ぎます」

「実は僕に考えがあるんです。できるかどうか解らないですけど」

 

 閉じ込められている間に考えていた反抗プランを伝える。

 

「なるほど、面白いアイデアです。ですが、まだまだ現実味に欠けますね」

「そう、ですか。上手い方法だと思ったんですけど」

「いえ、着眼点は悪くありません。少し時間を下さい。私が勝てるプランにしてみせます」

 

 くいっと左手で眼鏡を上げる。

 レンズがキラリと光を反射した。

 

 

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