《04-06》
「決まってるだろ。まろみ様のお役に立てるように、と考えてだ」
「生徒会に入る前から、まろみたんとは顔見知りだったんだ」
「ん、いや、特に面識は……なかった……かな?」
函辺が言葉を揺らした。
「どこで知り合ったんだっけ? ……どうも記憶が……」
呟きながら、左手で額を押さえた。
端麗な顔が苦しげに歪む。
「ハコベさん?」
函辺の只ならぬ様子に春乃が声を掛けた。
「ハコベさん? 大丈夫? ハコベさん!」
「あ、悪い。ちょっとぼんやりしてた。あれ? なんの話だっけ?」
小さく頭を振りながら、普段通りの快活な表情に戻る。
「えっと、その」
そこで昼休みの終了を告げるチャイムが鳴った。
「おっと、そろそろ戻らないと。パンありがとな。じゃあ、また」
「うん、またね」
離れていく函辺の背中を見ながら、春乃は考えていた。
以前、まろみと話していた時にも同じような事があった。
果たして偶然なのだろうか。
※ ※ ※
放課後、春乃はまろみの執務室に向かう。
いつも通り、分厚いドアをノックした。
「はい。どうぞ」
いつもと違う柔らかく透き通った声に驚きながら部屋に入る。
「お待ちしておりました。草陰様」
ドアの脇に立っていたメイド衣装の鈴奈が、深々と頭を下げた。
「あれ、涼城さん?」
「まろみ様と御形さんは出かけておられます。これをお渡しするように言われています」
差し出された瑞々しい球状野菜を受け取る。
「やっぱり忙しいんですね。生徒会の用事ですか」
「いえ、秘密特訓なんです!」
「はあ、特訓ですか」
「気になりますか? 気になるでしょう? 気になりますよね。でも、どんな特訓かは」
ほっそりした指を立てて、顔の前で可愛く左右に振る。
「ひ・み・つです」
「まあ、秘密特訓ですからね」
緩い笑いを交換した。
「涼城さん、つまらないことを聞いてもいいですか?」
キャベツをちぎりながら尋ねた。
「なんでしょう」
「涼城さんは、どうして近衛侍女隊に入ろうと思ったんですか?」
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