《02-10》
直ぐ後ろに立っていたのは、愛らしいメイド衣装に身を包んだお下げ髪の少女。
やや腰を落とし、広げた両手を胸の前においた姿勢で固まっている。
「おはようございます、涼城さん」
「え、あ、はい。おはようございます。草陰様」
「えっと……」
「こ、これはですね。その、草陰様がぼんやりしておられたようなので。脅かしてみようかなって。こう、わぁっという感じで」
コミカルな仕草で、両手を前に突き出す。
「あはは。涼城さんって、意外とお茶目さんなんですね」
「はい。お茶目さんなんですよ。意外と案外に。ふふふ」
ぎこちない笑みを浮かべる鈴奈。
「あの、涼城さん。朝礼って、いつもあんな風なんですか?」
「はい。月曜と金曜はまろみ様直々にお言葉を頂ける、とてもありがたい日なのです」
「ありがたい日、ですか」
「失礼かも知れませんが、草陰様はまろみ様の偉大さを理解しておられないのでは?」
「偉大さって言われても。僕にとってまろみたんは幼馴染で……」
「そこは改めて頂きたいところです。まろみ様は、草陰様と親しかった頃のまろみ様とは違うのです。ハッキリ言わせて頂きますが、いくら幼馴染とは言え貴方ごときが……」
「鈴奈、出過ぎた口を利くな」
凛とした声が遮った。
いつの間にかドアが開けられ、まろみと凛華が立っていた。
「ま、まろみ様」
鈴奈が弾かれたように春乃から遠ざかる。
「鈴奈が失礼なことを言ったようだ。だか、それも言葉も余を想っての物。許して欲しい」
頭を下げるまろみ。
「そんな! まろみ様がそんな! わたくしは、わたくしはただ!」
「涼城さん、近衛侍女隊隊長である貴方であっても、これ以上の暴言は懲罰対象となりますよ」
訴えをバッサリと切り捨てられ、鈴奈はぐっと唇を噛んで押し黙ってしまう。
「ちょっと止めてください。こんなのおかしいですよ」
重くなり始めた空気に、思わず春乃が声を上げた。
「僕が悪かったんです。まだ解らないことが多くて、だから、涼城さんは悪くなくて……」
「わたくし、失礼します!」
いきなり外に向かって駆け出した。
「あ、涼城さん」
「いいのだ!」
咄嗟に後を追おうとする春乃を、まろみが呼び止める。
「いいのだ、春乃。そっとしておいてやって欲しい。鈴奈とは親しい友人だったのでな。あやつの性格はよく知っておる。冷静さを取り戻せば、自ずと反省するであろう」
「そっか、親友だもんね」
「昔の話だ。今は側近の一人に過ぎん」
ふと寂しげな表情を浮かべた。
その憂いのこもった大人びた表情に、春乃は掛ける言葉を失ってしまう。
「そ、そうだ。瀬莉さんも側近なの? まだ会ってないんだけど」
「瀬莉?」
訝しげに繰り返しながら、凛華の方に顔を向けた。
その視線に凛華が小さく首を振る。
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