第176話 vsXXX相談会

 夕食の席。

 普段ならアパートの住民が揃って食事が行われる場なのだが、今回はXXXのメンバーが席を外している為、それ以外の面々で夕食をとることになった。

 もしもヘリオンが暴れた際、アーガスが戦えない者を守る算段なのもある。


「アーガスさんは、テイルマンについて何か知ってる?」

「おや、歴史の勉強かな」


 大家のおばちゃんに気を使ったのか、それとも単にヘリオンがテイルマンだと知らないのか。

 アーガスはどこかとぼけた口調でスバルの疑問に答え始める。


「少し学問を触れたことがある者なら、名前くらいは聞いたことがある。それがテイルマンだ。美しい知名度ではあるが、その正体は未だに謎も多い」

「そういえば、アタシも名前だけは聞いたことがあるねぇ」


 大家のおばちゃんがぼそりと呟く。

 以前ヘリオンが言ってた通り、おばちゃんはテイルマンの正体を知らないようだった。


「今頃、生きていればヘリオンちゃんたちと同じくらいの年齢かねぇ」

「その通り。流石は大家嬢」


 おばちゃんを相手に『嬢』つけは中々厳しい気がしたが、それを指摘すると後が怖いので敢えて黙っていることにした。


「私が王国で働いていた当時の話になるが、テイルマンは既に新人類王国には存在していなかった」

「あら。アーガスちゃん、王国兵だったのかい?」

「も、元です! 私の祖国から徴兵されたので……」


 訝しげなおばちゃんの視線にマリリスがフォローに入る。

 アーガスは静かに頷くと、自分が知っているテイルマンについて語り始めた。


「だが、強大な能力者なのだという噂は常々聞く機会はあったね」

「そこが理解できないんだよ」


 スバルがアーガスの言葉に待ったをかける。

 

「俺もそんな話を聞いたけどさ。テイルマンって尻尾が生えた少年のことだろ? 能力だけで言えば、もっと凄い奴がいると思うんだけど」


 それこそ、アーガスがいい例だ。

 尻尾が生えている人間と、植物を自由自在に操る人間。

 どちらが凄そうかと問われれば、誰もが後者を選ぶことだろう。


「先程も話した通り、テイルマンは私が在籍するよりも前に存在しなくなった兵だ。なので、直接見たことがあるわけではない」


 ただ、そんなアーガスでもテイルマンの噂だけはよく耳にしていた。


「しかし、テイルマンの能力が尻尾だけではないとは聞いたことはある」

「尻尾だけじゃない!?」

「そうだ。呼称のせいで勘違いしがちだが、そもそもテイルマンの能力は自分のお尻から尻尾を出すことではないのだ」


 腕。

 足。

 胴体。

 下半身。

 頭部に至るまで、能力の影響は及ぶ。

 テイルマンは単純に尻尾の生えた人間の呼称であり、彼の全てを表す単語ではないのだ。


「じゃあ、完全に変化したらどうなるんだ」

「君もなんとなく理解してるのではないのかね?」


 更に深く問い詰めるスバルに対し、アーガスは白い目を向ける。

 彼は僅かにマリリスへと視線を逸らすと、再び食卓へと視線を落とす。


「身体を全て変化させた後、そこにいるのは正真正銘の化物だ」

「どんな?」

「テイルマンの尻尾はトカゲの尻尾に近い性質を持っているのだそうだ。そこから推測するに、最終的な形態は恐らく全身を鱗に覆われた爬虫類人間か、ティラノザウルスのような大型爬虫類になるのではないかと思うよ」


 遂に恐竜まで来たか。

 飛び出してきたキーワードを前にして、スバルは顔を両手で覆う。

 もしもアーガスの予想が正しいとする。

 そうだとすれば、ヘリオン・ノックバーンは感情が制御できなくなるとティラノザウルスに変身してしまうというのか。

 これまでに出会ってきた新人類に比べてもかなりSFめいている気がした。


「まあ、何度も言うように」


 恐竜人間というキーワードが頭の中でぐるぐると渦巻いているスバルを現実に引き戻す声が聞こえる。

 スバルが僅かに顔を上げると、アーガスが宥めるような口調で続けた。


「私は実物のテイルマンを見たことはない。あくまで見聞に過ぎない以上、彼の力については未知の領域を飛び出さないのだよ」

「恐竜になれるかもしれないっていうのは物騒だねぇ。映画に出てくる怪獣にでも変身しそうじゃないか」

「流石に巨大化する新人類の話は聞いたことが無いので、テイルマンが本当に恐竜になるのだとしても人間のサイズのままでしょうな。それでも、当時のテイルマンの活躍を考えれば凄まじいパワーが予想できますがね」


 一通り話を聞いて理解したが、アーガスはヘリオンがテイルマンなのだということを知らないらしい。

 彼の会話は自然体だった。

 やんわりとヘリオンのことを伝えた方がいいのだろうか。

 スバルはマリリスにアイコンタクトを試みる。

 じっ、と少女を見つめる少年。

 視線に気づく少女。

 にっこりと微笑んで手を振ってきた。

 違う、そうじゃない。


 首をぶんぶんと横に振ってから、アーガスを指差す。

 そして何度か小指で『X』の文字を突き付けてみた。

 要はテイルマンがXXXに所属していたと教えていい物かを尋ねているのだ。

 大家のおばちゃんがいる手前、XXXの詳細については触れることはできない。


 ところが、スバルのそんな意思は少女には届かず。


「す、スバルさん! 不潔です!」

「なんでだよ!?」


 どういうわけか不潔扱いされた。

 横に座るアーガスとおばちゃんが訝しげな視線をスバルに送る。


「どうしたのだね、ふたりとも」

「まあ、スバルちゃん。男は青春に走る者だけど、狼になるもんじゃないよ」

「誰も狼になるつもりはございません!」


 いかん、このままだと話が変な方向に向かってしまう。

 あの天然娘に無言の伝達をしようものなら問答無用で不潔扱いされてしまいそうな予感がしたので、スバルは独断でその場を切り抜ける。


「アーガスさん。テイルマンって、カイトさんたちの元同僚だって聞いたんだけど」

「ほう!」


 自分ではオブラードに包んで話をしたつもりだが、おばちゃんはどう思うだろう。

 不安は募るばかりだったが、彼女が何かを切り出すよりも前にアーガスが口を開いた。


「それなら特に問題はあるまい」

「え?」


 紡がれた言葉は、スバルの斜め上をいく言葉だった。


「要は山田君の友人なのだろう。それなら、テイルマンにいかなる事情があったとしても心配は無用だと思うがね」

「それってつまり、トラブルが起きてもカイトさんがどうにかしれるってこと?」

「勿論、私は山田君を信頼しているよ。だがそれ以上に、彼らが友人だと認めるテイルマンを信じてみたい」


 現在進行形でそのテイルマンが暴れ出すかも知れない状況の中、アーガスはそう結論付けた。


「話はよく分からないけど、アタシもアーガスちゃんに賛成だね」


 おばちゃんもアーガスの意見に同調する。

 彼女はパワフルにおかずをたらいあげつつも、力強く言った。


「カイトちゃんの友人ってことは、ヘリオンちゃんの友人ってことでしょう。それならテイルマンもそんなに悪い奴じゃない筈さね」


 凄い理論だ、とスバルは思う。

 正にそのヘリオンこそがテイルマンその人なわけだが、きっとこのおばちゃんはそういう考えが及ばない程にヘリオンを信用しているのだろう。

 彼が住民の信頼を勝ち取った証でもある。


「でも、ちょっと怖いかもしれないね」


 そんなスバルの考えをぶち壊すように、おばちゃんは続けた。

 眉間にシワを寄せ、不安を隠すことなく話す。


「テイルマンって、表情を変えることなくライオンを殺した子だろう? 言い方は悪いけど、そういう子と同じ場所で寝泊まりしてるとは思いたくないねぇ」


 もしもこの場にヘリオンがいたら、どんな表情をしているのだろうか。

 他人に気遣いを見せつつも、自分のことをしまい込む素振りをみせる青年のことを思うと、胸が苦しくなった。







 ヘリオンの自室では、事情聴取が引き続き行われていた。

 カイトによる強行軍ともいえるやり方にはエイジとシデンから非難の声が出たが、しばらくしてから落ち着きをとりもどしたヘリオンがそれを制止する。


「最初から全部お見通しってわけか」

「こうでもしないとお前は素直に話さない。昔からそうだ」

「失礼な。昔は同期の仲間たちにもストレスケアに付き合って貰ってるんだよ」

「今はどうなんだ」


 責めるような口調に、ヘリオンは押し黙る。

 彼のストレスが溜まる物言いではあるが、カイトは現状を強く危惧していた。


「昔と今は違う。お前はギリギリにならないと他の連中の手を借りない。ましてや、テイルマン関連となると尚更だ」

「……よく見てるんだな」

「わかりやすいんだよ。お前は」


 それはさておき、現状の最大のストレスについてだ。

 ヘリオンが抱える写真立てに視線を移し、カイトが問う。


「彼女とは本気だったんだな?」

「ああ。名前はレジーナ・クロムメイル。同じ学校で、芸術教師として働いている」


 観念するように肩をすくめると、ヘリオンは写真立てをテーブルの上に差し出した。

 悪いと思いつつも、3人はそこに映る女性の姿を見る。

 綺麗な黒髪の白人女性だった。

 芸術を教えているということだが、健康そうな肉付きを見ると体育も行けそうな気がする。


「付き合ってどのくらいなの?」

「もう1年以上になるね」

「どこまでヤッたわけ?」

「おい!」


 興味深げにふたりの関係を聞いてくるシデンを、エイジが一喝する。

 恋愛関係の問題になった瞬間、妙に食らいついてきた。

 なんというか、質問も下品である。


「エイちゃん、気にならない? 同級生が知らない間にいい人作ってるんだよ。ここで馴初めとか聞かないと、一生コイバナに縁がないまま終わっちゃうじゃない!」

「なんでそんな気合入れてるんだよ」

「しかもフラれてるわけだからな」


 ストレートすぎるカイトの言葉を受け、ヘリオンが大きく仰け反った。

 強烈なパンチを受けたかのように胸を抑え、涙目になっている。


「おい、お前もオブラードに包んで話せ。このままだとヘリオンがストレスで変身する前に言葉の暴力で死ぬぞ」

「……善処しよう」


 今にも泣き出しそうなヘリオンの姿を見て、流石に罪悪感が芽生えたのだろう。

 ちょっとバツが悪そうな表情になる。


「関係は良好だと聞いたが」

「この写真の通りだと僕は思ってるよ」


 腕を組み、笑顔で2ショット撮影をしている男女。

 この写真を見る限り、ヘリオンとレジーナの関係は決して悪くなかったと思いたい。


「……馴初めとか聞いてもいい?」

「赴任したばかりで、右も左もわからない状態の僕をサポートしてくれたのが彼女だった。それがきっかけで、話す機会も多くなってね」

「告白はどっちから?」

「僕から」

「じゃあ、結婚の約束とかは!?」

「お前は少し落ちつけ」


 興奮が収まらないままに質問しまくるシデンを再び宥めると、エイジが頭を下げる。

 最終結果がすでに出ているのだ。

 これ以上は野暮というものである。


「……さっきも聞いたが」


 苦笑いするヘリオンに対し、もう大丈夫だと踏んだのかカイトが本題を投げつける。


「どうしてテイルマンのことを彼女に?」


 どう考えても一番の問題点はここである。

 この地球上でテイルマンの存在を知らない者はいないだろう。

 それほどの有名人だ。

 教師であるなら尚更である。

 一般的に、テイルマンが忌み嫌われる存在なのはヘリオンも認知していた筈だ。

 王国に所属していた時、テイルマンに対する興味と畏怖の視線を一身に受けていたのは他ならぬ彼である。


 王国で暮らしていた時でさえその有様なのだ。

 外に出たら、そういう視線がもっと強くなるのは想像できないわけがなかった。


「テイルマンは一般的に、平気な顔をしてライオンを殺す子供だ」

「そうだな。僕が取り扱う教科書でも、そういう風に紹介されている」


 教科書の登場人物が自分のことについて触れるというのも奇怪な光景ではある。

 しかし、歴史の教師でも自分の項目を良く紹介することはできない。


「長い年月が経ってるなら誤魔化しようはある。だが、あの映像資料はまだ20年も経っていない。新人類の戦闘力も立証されている」

「そこまで分かっていて、どうして喋った」

「……羨ましかったんだよ」


 恨めしげにカイトを見やり、ヘリオンは続ける。


「ここに来て間もない頃、君とスバル君が対立することがあっただろう」

「……ああ。もうかなり前の話になるが」

「正直に言うとね。あの頃、僕はスバル君を信用していなかった。力を持つ新人類の凄まじさを間近で見て、そのまま逃げるんじゃないかって」


 ところが、そんなスバルは色々と回り道をした結果、正面からカイトに挑んだ。

 笑顔で友人との決戦に挑むスバルの姿は、ヘリオンからすれば中々衝撃的だった。


「僕はここに来てから、ずっと自分を偽ってきた。力も封印して生活してきたんだ。けど、君とスバル君が真面目にゲームに取り組む姿を見て、羨ましいって思い始めたんだ」


 だからこそ、


「僕も自分の全部を彼女に認めてほしかったんだ」


 だからこそ、意を決してプロポーズに踏み切った。

 学校の行事を考え、余裕ができるタイミングを見計らって予定を組んだ。

 しかし、結果はご覧のとおりである。


「心配かけさせてゴメン。話したら、少しは気分が楽になったよ」

「待て、ヘリオン」


 立ち上がり、そのまま出ていこうとするヘリオンを呼びとめる。

 カイトは難しそうな表情をしつつ、問う。


「今までならこれで終わりだった。だが、今回ばかりはそうはいかない」


 XXX時代のヘリオンのストレスケアは、簡単に言ってしまえば愚痴を零してすっきりさせるという方針だった。

 だが、今回は発端のレジーナが同じ職場で働いている。


「今は休んでいるらしいが、また彼女が学校に出たらどうするつもりだ。その時、自分を抑えられるのか」


 厳しい言い方かもしれないが、危惧しなければならないのは職場での暴走である。

 今はアーガスも用務員として働いているが、教師と用務員では仕事がまるで違う。

 暴走が発覚するロスタイムも発生するかもしれない。

 暴走が起こってからでは遅いのだ。


「敵をきちんと認識しているならお前の力は頼りになる。だが、そうじゃない場合はお前が築き上げてきた物を壊すだけだ」

「なら、どうすればいいんだ!」


 振り返り、ヘリオンはカイトの肩を力任せに掴む。


「自分の力が不完全なのは理解している! それでも、やるしかないじゃないか!」


 もう一度レジーナと会った時。

 それこそどうなってしまうかわからない。

 カイトから指摘を受けずとも、理解している事だ。


「そうだ。お前は何時も通りでいい」

「なに?」


 ところが、カイトはヘリオンの憤りを前にして妙に冷静な態度でいた。

 

「スバルやマリリスのこともある。俺がなんとかしよう」

「カイちゃん、なにか考えがあるの?」

「ある」


 予想外の返答に、全員が身を乗り出した。

 ヘリオンに至ってはそのまま土下座の姿勢にシフトしかねない勢いである。

 この件に関して一番危機感を覚えているのは他ならぬヘリオン自身だった。


「ほ、本当になんとかできるのか!?」

「珍しいな。お前がこういう時に策を出すとは」

「お前ら、俺を何だと思ってるんだ」


 仲間たちに半目を向けると、カイトは静かに己の作戦を語り始めた。

 どこか勝ち誇ったような表情で説明し始めるその姿には、かなりの自信を匂わせる。


「要は職場でヘリオンのフォローができればいいんだろう。しかも、なるだけ近くで」

「まあ、結論から言えばそれが理想だな」

「だったら簡単だ。俺も教師になればいい」


 しばし、場を静寂が支配した。

 ヘリオン、エイジ、シデンは各々首を傾げてお互いを見やると、カイトに視線をシフト。

 その後、再びお互いに視線を見合わせる。

 シデンがエイジの頬を抓った。


「痛い?」

「痛い」

「じゃあ、夢じゃないね」

「そうだな」


 確かめると、再度ヘリオンの部屋に静けさが戻っていく。

 しばし沈黙が続くと、3人はタイミングを見計らったかのように飛び退いた。


「えええええええええええええええええええええええぇっ!?」

「じょ、冗談はその目玉と右腕とエレノアだけにしろよお前!」

「そもそも、君に教師なんてできるのか!?」

「見くびるな。こう見えても赤点中学生を高校入学まで導いた経験がある」


 意外と実績はあった。

 その事実に驚きつつも、ヘリオンは問題点を指摘する。


「しかし、教員免許はどうする!?」

「何とかなると言ったのはお前の筈だ」

「う……」


 確かにその辺はなんとかなる。

 自分がいい例だった。

 この島国は避難民の入れ替わりが激しいため、住民登録などが割といい加減なのだ。

 そのお陰で犯罪も多発しているのだが、最近は『石鹸仮面』なる半裸の男がそれらを取り締まっている為、事件発生その物は減りつつある。


「構わないな」

「ま、待て! まだ問題はあるぞ。今のバイト先はどうする!?」

「やめる。お前たちの為だ」


 真剣な目で言われてしまった。

 ありがたい気持ちが湧き上がり、無下にできなくなってくる。


「その容姿はどうするんだ」


 エイジが最大の問題点を指摘する。

 そもそもカイトは頭に包帯を巻いている容姿が問題となり、色んなところでお祈りメールを頂いているのだ。

 移植された目玉がそのままである以上、誤魔化しは利かない。


「問題ない。シナリオはこうだ。クロムメイルが暫く授業に出れないから、臨時で芸術教師を雇うことにする。芸術は個性豊かな方がいい。だから俺も個性あふれる姿で問題ない」

「それ、偏見入ってない?」

「多少あるかもしれんが、大丈夫なはずだ。俺がダメならエレノアになんとかしてもらう」

「それ余計な不安しかねぇぞ!」


 容姿については火傷をしたと言えばなんとでもなる。

 芸術という分野も、エレノアがいるならたぶん問題ないだろう。

 強いて問題点を挙げるなら、カイトとエレノアのコンビが生徒たちの若さについていけるか否かである。


「それに、芸術の臨時教師ならクロムメイルに接触する機会もある筈だ」

「い、意外と考えてるんだなお前……」

「失礼な。既に向こうの学園長には了承を貰っているし、後はバイト先に連絡を入れるだけだ」

「がくえんちょおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」


 意外にカイトは手早く、そして学園長は寛大なお方であった。

 顔の半分を包帯で巻いており、割と図々しい態度をとる男であり、ついでに二重人格者でも採用してしまっている。

 

「正直なことを言うと俺は生意気なガキが嫌いだ。だから当初は教職を避けてたんだが、あのパツキンが採用されるくらいだ。意外となんとかなるかもしれん」


 それを言ってしまうと反論ができなかった。

 不安げな表情を緩めようとしない3人の仲間を一瞥し、カイトは続ける。


「何、フォローするのは俺だけじゃない。あそこにはサルもいる」

「ああ、ゲーセンで司会やってた奴か」

「サルにヘリオンの能力の説明をするつもりはないが、生徒側に協力者がいれば大分違う筈だ。全部喋っていいならそうするが?」

「ああ、もう! わかったよ、好きにしろ!」


 尚、この出来事でヘリオンのストレスが加速し、大凡1年ぶりに尻尾が飛び出して部屋が大変なことになってしまったのだが、それはまた別のお話である。

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