第陸話 【2】 天神と星神の激突
そして、体勢を立て直した僕に向かって、また天津甕星が突っ込んで来ます。
「天神の
「甘いわ。星神の
浄化の力を宿した、鋭い刃を飛ばした僕に対して、相手は邪悪な力を宿した刃を、複数飛ばしてきます。
こんなもの、僕の浄化の力で消してしまえると、そう思ってしまうけれど、相手の邪な思いが強ければ、そう簡単には消せないのです。
しかも、それが複数となると、更に打ち消すのが難しくなります。
「くっ……!!」
「ぬん!」
とにかく僕は、相手の刃を避けまくるけれど、相手は僕の刃を、拳1つで消し飛ばしました。だけどこれは、ちょっとした手数の差です。これくらいなら……。
「何をどう考えているかは知らぬが、戦いとは、トドメを
「……なっ?!」
天津甕星がそう言った瞬間、突然僕の足が熱くなっていきます。良く見ると、僕の足が深く切れていて、そこから大量の血が出ていました。こういう場合、痛いというよりも、その部分が熱くなるんですね。
なんて関心している場合じゃないです。相手の刃を、1本見落としていた? 僕自身が昇華しているから、この傷は直ぐに治ったけれど、死角に刃あったって事ですよね。
「そら。今度は避けられるか?」
「ん~っと、それじゃあ避けません。天神の禊!」
それから、また天津甕星が同じ攻撃をしてきたけれど、それならそれで、別の方法を試すだけです。
だから、風の神術を強化したこの術で、相手の刃を吹き飛ばしてみます。そしてその後に……。
「狐狼拳、
「がはっ?! なっ……いつの間に!?」
そりゃ攻撃を受けてばかりじゃいられません。後ろに回り込み、右腕の火車輪を展開し、僕の妖気を沢山流し込んで、白金の炎を逆噴射させ、相手の背中に拳を打ち込みました。
力が上がったからか、それはまるで、光の柱のように見えました。炎の密度がより高くなって、そう見えたんですね。
だから咄嗟に、技名の後に付け加えちゃいました。それに、普通の狐狼拳よりも威力が上がっているからね。
今まで敵対して来た人や妖怪、妖魔達なら、今ので一発KOですよ。
「ぐっ……ふふふふ。やりおるな」
だから、お前も吹き飛んでおいて欲しかったです。まさか踏ん張るなんて……これで吹き飛ばないなんて。
「チート……」
「それは貴様もだろう!!」
「うひゃあっ?!」
しかも、そのまま自分の背中に腕を伸ばし、僕の手をしっかりと掴むと、前方に向かって投げ飛ばしてきました。咄嗟に手は引いたんだけれど、相手の方が速かったですね。
「
「技名雑になってる!
その後に、投げ飛ばした僕へ向かって、相手は光り輝く星の塊の様な物を投げ飛ばしてきます。砲弾みたいですね。それを僕は、御剱で斬り裂きます。それから体勢を立て直し、地面に着地です。
「ふん。貴様も組み合わせているだけだろう。本当は分かっているはずだ。命を賭けた真剣勝負の最中にーー」
「ーー技名なんて、叫んでいる暇はない!」
「その通りよ!」
すると天津甕星は、また光り輝く星の塊を投げ飛ばしてきます。それを、僕はまた斬る。
だけど相手は、今度は沢山の星の塊を投げてきています。つまり、手を止めたらマズい。次々と襲ってくる星の塊を、次々と斬り裂いていかないと。
「さぁ、いつまで持つ?」
「こっちの台詞です。その内、あなたがスタミナ切れを起こすでしょうね」
「ふん。余のスタミナ? 神にそんなものがあるとでも?」
あっ、そうか。そもそも人間とは出来が違うから、スタミナの概念がないんです。だってそんなのがあったら、この世界を見守れませんからね。
それなら、なんとか打開策を見つけないと、ずっとこのまま?
そんな事を考えている間にも、次々と星の塊が飛んできます。
こんなの……斬りつけているだけだと、その内僕の方が押し負けそうです。相手はそれを狙っている。それなら……。
「ふっ……!!」
僕は身を低くし、飛んで来る星の塊を避けると、一気に前に走り出します。
「ほぉ、ようやく攻めて来るか……だが、もう遅いわ!」
確かに、気が付いたら星の塊の数が、とんでもない事になっていました。これはまるで、流星群みたいです。横に飛んでいるけどね……。
それでも、近付くと同時に星を斬り裂けば、隙間は出来ます。そこを縫うようにして進んで行けば……。
「むっ……」
その内、相手に辿り着けるって訳でーー
「
「うぐぁあっ?!」
ーーと、そう思っていた次の瞬間、天津甕星が更に大きな星の塊を飛ばしてきました。これ、もう隕石です。
避けられなかったから、御剱で受け止めるしかなかったけれど、あまりにも大きすぎたから、思い切り押されてしまっています。それと結局、技名言っちゃっているじゃないですか。
「
とにかく僕は、御剱を思い切り振って、目の前の隕石を斬り裂きます。それと同時に、真空の刃も飛ばして、相手に攻撃をします。だけど……。
「弱いわ」
相手は避ける素振りすら見せず、身に纏った鎧で防いじゃいました。やっぱり、アレ硬いですね。これくらいじゃあ駄目ですか。
それと、僕の攻撃を防いだ瞬間、相手が攻撃を止めました。だけど、その直ぐ後に、またさっきと同じ攻撃をしてきます。芸がないですね。というより、さっきこれで押していたから、いけると思われたかな?
残念、2度は通じないよ。
「術式吸収!」
「……ちっ、なるほどな」
そして僕は、吸収した相手の術を返します。
「強化解ーー!」
だけどその時にはもう、天津甕星の姿は目の前から消えてました。ということは……。
「ーー放! そこです!!」
「ぐっ!!」
本当に、ギリギリでしたね。相手の、星の攻撃による術を返す瞬間、僕は後ろを振り向き、同時にその腕も後ろにやりました。
すると、天津甕星が禍々しいその腕を、僕に突き刺そうとしていました。しかも、あと数センチという所です。
だけど、ギリギリで僕の強化解放が間に合ったので、強化した相手の星をぶつけます。
「ぐぉぉおお!!!!」
やっぱり、自分の力は効くみたいですね。だいたい皆そうなんですよね。
それに、沢山飛ばしてきていた相手の星を、一気に吸収して、1つに纏めて返しているので、相手は相当効いているみたいです。
そして遂に、天津甕星はその攻撃で吹き飛び、地面を二転三転して、うつ伏せで倒れました。
やっと、相手にダメージを。ここまで長かった……本当にこいつは、今までで1番の強敵です。星の神様なんだから、当然なんだけどね。
それでも、どこかで僕は、なんとかなるだろうと思っていました。いや、今も思っていますよ。だって、白狐さんと黒狐さん、それに他の皆も、僕の勝利を信じて戦ってくれています。
だから僕は、勝つしかないんです。勝たなきゃ駄目なんです。こんな自分勝手な神様に、僕達の世界を汚させはしません!
だから、このまま追撃です!
「トドメです!」
「……なっ?! これは……!」
そして僕は、自分の白金色の狐火を上空に飛ばし、途中で固定させると、それを徐々に大きくしていきます。まるで、太陽みたいにね。
「くっ……!! 仕方ない……星神砲」
すると、うつ伏せで倒れていた天津甕星が急いで起き上がり、僕の作り出した炎の塊に向かって、光り輝く星を飛ばしてきました。
どうやら、天津甕星は倒れたフリをして、力を溜めていたようです。だけどね、感知能力も格段に上がっている僕の前では、それは無意味ですよ。分かっていましたからね。だから追撃したんです。
「
そして、十分に大きくなったその炎の塊を、僕は相手に向かって落とします。
もちろんその途中で、相手の飛ばしてきた大きな星と激突します。でも、負けないよ。
もうこれでーー決めます!
「うぅぅ……ぁぁああ!!」
「ぬっ……ぐぅぅ!!」
そのお互いの攻撃が激突した瞬間、激しい衝撃波が辺りに広がり、僕達を吹き飛ばそうとしてきます。
それを僕は、しっかりと踏ん張ります。これで吹き飛ばされた方が負けちゃいますからね。
たとえこっちの力が尽きても、僕は絶対に膝を突きません!
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