報告

 

 厚生労働省新型疾病対策課 主任 速水 瀬良は胸ポケットから携帯から取り出すと上司に薬害患者の確保、搬送が不可能になった事を報告していた。


 同僚からは携帯という前世代の遺物を愛用している事を馬鹿にされているが一向に気に留める様子はない。スマホはいざと言う時の戦闘行為の邪魔になる、実利一辺倒の選択だった。


「はい、大変申し訳ありません。患者の確保に失敗しました......現状、現地に到着した職員総員で捜索にかかります。但し確認された患者への副作用、身体的能力の一時的向上が想定されていた薬理作用を遥かに超えていた事も想定外だったため、捜索範囲の拡大、対応人員の増員が急務と考えます」


 あ~こんな面倒な役所問答やっている暇ないんだけどな......瀬良はイラついた時いつも見せる独特のクセがある、彼女は左手で指をやや弱めに鳴らしながら報告を続ける。


「はい、経緯顛末書については全て完了後に、はい分かりました」


 速水は電話を切ると、そばで聞き耳を立てていた、部下の加藤や他の部下達が感じている場の緊張感を和らげる為に茶目っ気を出しながら言った。


「加藤君!課長へのごめんなさいは終わったから、もうちょっと頑張ってね」


「分かりました、でも主任、あの少年をどうやって探すんです?相当運動能力が上がっていますが」


「そうだね、これは闇雲に探しても意味が無いな、よし!ちょっと古めの攻め方だけどプロファイルするしかないね彼の家族に家庭環境を詳しく聞きだして、趣味、嗜好、全てお願い」


「分かりました!主任は?」


「私は彼の学校に行ってみる」


「分りました、でも敵陣の妨害もありえますので、気をつけてください」


「有難うね」


 速水は車に乗り込む。


 早くしないと、あいつらが先に。


 速水は車を走らせた。

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