目を覚ますと、僕は体に痛みを感じる事も無く床の上のマットに横たわっていた。

気付くと、さっきのユキと名乗った女子が覗き込むように僕を見ていた。




「ウンチ君、どう?体には問題ない?」




「あっありがとう」



何僕はお礼なんか言ってるんだ?しかもウンチ君って......なんだこいつめっちゃ感じ悪い!しかもくそブスだと思ってたのに......


目の前にいるさっきまでブスだと決め付けていた人物は、ふわっとしたショートカットで二重まぶたのくりっとした目がひときわ大きい、学校で会ったらドキっとするようなおんなの事だった。えっ嘘だよね?あんなにくたらしい事言ってたの別の人だよね?



「あんたが運動神経悪すぎて防御の姿勢を取ってくれないから、傍に転がってたマットをずらせて何とかMCとかにダメージ受けないようにしたんだ。でも右手とか大丈夫?相当打ち付けてたみたいだけど痛む......でしょう?」



ああ......同一人物であること認証しました。


「えっ全然痛くないよ?見間違えたんじゃないの?どこも怪我してないけど」



「......そっそう、じゃあ早速だけどDコード持ってるんでしょう?それがあればここから出る事なんて簡単だからね」




「え?何言ってるの?そんなもの知らないよ」




「ええええ!持ってないの?でっでも他のコードか何か持ってるんでしょう?ねっそうだよね!そうだって言いいなさいよ!」




「ちょっとくっ苦しいよ、何も持ってないよ。何ソレ?Dコードって」



そう僕が言うとユキは目の前でへたりこみ、顔が蒼白の状態で震えだしていた。

その時背後で何か焚き火をしている時の様なパチパチと何かが弾けるような音がしだした。





音がするほうへ行ってみると、そこは床の一部分が何故か緑色に光っていた。

光っている部分を良く見ると小さな楕円形のツブツブがまるで敷き詰められているように並んでいた。粒のひとつひとつには、何か小さな核みたいなものが小さく震えながらうごめいている。




ずっと粒の集まりを見ていると頭がボーっとしてくるような感覚と、動悸が少しづつ早くなってくるのが良く分る。その直後、何時間か前までの嫌な感覚が戻ってきた。



ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーキィィィィィィィィィーーーーーーーーーーーーーーーーー



「痛ってえ!まただ」



「どうしたの?あっ!何これ」



「何時間か前ここに閉じ込められる前に、廃校の傍で酷い耳鳴りになったんだ......痛!」

ピィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「......その後は?ねえ!その後どうなったの!」



「分ったから、揺らさないでよ!その後へんな感じのする店員がいる

コンビニに入ったら不思議とピタッと止まったんだ。だけど店を出てまた酷くなって、変な夢みながら歩いて気付いたら自衛官に囲まれてた」




「どの時点で耳鳴りは止まったの?」



「えっ?こんな時にそんな事関係ないじゃんか」



「いいから!いつから?お願い!思い出してよ」



「えーっとそうだあの時だあのコンビニの店員に僕が耳鳴りが酷い事当てられた時なんか言われたような......」



「な、何って言ったの?」




僕は急に息が詰まるように言葉がでなくなってしまった。

何故だが分らないけど、この話題を話せば嫌な事が起こるような気がして

動悸が激しくなっていくのを感じた。






「わっ忘れた......」



「馬鹿な上に、嘘まで下手クソ。いいなさいよ」


美少女、口汚いコンテストあったら優勝ですね。などとこの非常時に思ってしまう。


「嫌だ......」



「いいなさいよ!」


そう言うとユキは僕の首を冗談ではなく半ば本気で絞めながら強要してきた。


「くっ苦しい!!」



「ここでそれ思い出してもらわないと、どうせ死ぬんだからこのくらい正当防衛だよね!」



こいつマジキチ!やばい!美少女サイコパス コンテスト優勝だ!



「グエ!ちょっと待って!おっ思い出した」





頭に少しフケがある太った銀縁メガネの店員が言ってた事を本気で思い出す。



『それだけ酷い耳鳴りなら寝れなくて当然ですね、お大事に』




『えっ?なんで......』




『126円になります』



その後だ、何ていったんだっけ?あっ思い出してきた!


薄気味悪い、ある意味残念な男の口元が歪むように一瞬だけ含み笑いしながら低く言ったのを思いだす。



―――――――――――――吸い込まれないでね―――――――――――――――――



「吸い込まれないでねって言ったの、その男?」



「たぶん......」



「ブタフクミだ......」



「えっ?何ってるの?」


「早く逃げないと!あんたも早く逃げる方法考えなよ!でないと!」


「どうにも、できないよ!何も思い浮かばないよ!」



そう僕たちが言い争いをしていると、粒みたいなうごめいていものは少しずつ僕らと距離を近づけてこいた。




「あんたの中にいる融点泥棒に早く聞いたらどうなの?どうせ取り込んでるんでしょ?」




「なっ何を言ってるのかさっぱり分らないよ」



「だから言ってるでしょう、嘘つきが下手なの分ってるから隠しても無駄だよ!声、聞こえるんでしょう?」



「馬鹿な事言うなよ!」


「ひっ!」


「なに?今度は?」



「あんたの右手の指......なんかおかしくない?」




そう言われて僕は右手を見ると、右手の手首がまるで溶けているように黒く変色して床に繋がりかけていた。






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光合成 めろんぐま @melonguma

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