【長編】有刺鉄線でマフラーを編む。

作者 五水井ラグ

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★★★ Excellent!!!


あのころ

制服と軍服とはおなじものなのではないかと
そういうことを考えていた。
わたしたちにつけられた出席番号という記号。
わたしたちを集団悪夢のなかに呼びこむ号令。

誤解をおそれずにいれば
毎日戦争へと出征する兵士の気持ちだった。
わたしたちはそこで幾度も
傷口から苺味のジャムを流して死んだ。

ポッキーの槍に突き刺されて
キャンディの大群に襲われて
マシュマロの真綿で全身を締めつけられて

そしてわたしは
ケーキに打ち立てられた蝋燭を
たくさん集め、有刺鉄線にして
自分自身を守ってた。

あまい、甘いお菓子みたいな戦争。
現実感をともなわない夢のなかでの戦いは
幾度死んでも、何度でも生き返る。その繰り返し。
だれがか死んでも、この夢はつづく。
わたしが死んでも、悪夢はおわらない。

女の子はいつだって、砂糖菓子の戦争のなかにいるのだ。
わたしはそう思う。

★★★ Excellent!!!

読むよろこび

絢爛たる言葉の波にひたり、読むことのよろこびを存分に味わえる稀有の物語。

自明性が壊れて生まれ落ちれば、生とは不断の戦いとなる。

それは、詩として現実を切り裂く刃を秘めた言葉によってこそ相応しく祝福されるものでもある。

美と論理の婚礼に、最大限の賛辞を、送りたい。