338日目:悪戯好きな……。

 神聖歴六一〇三年・夢見虎ゆめみとらの月第一七日・天気:―


 昨日からセーヴェル遺跡ダンジョン第四階層の探索を行っています。

 罠の構成や魔物の種類は第三階層までとほぼ同じような感じですね。

 これなら油断せず進めば、今日中に第四階層は突破できるかもしれません。

 よし、頑張りましょう! 目指せ第五階層! そして表層部攻略です!


 そう意気込みつつ歩いていると、妙な音が聞こえてきました。

 バサバサとまるで大きな鳥が羽ばたいているような音です。

 不思議に思い周囲を見渡しますが……なにもいません。

 けれど音は段々と大きくなり、それが近付いていることが分かります。

 これは嫌な感じがしますね……この場からすぐに離れたほうがよさそうです。


 しかし、そう思った瞬間、カチッ、という不吉な音が通路に響きます。

 !? 罠の起動音です! まさかまたやらかしましたかニコさん!?

 反射的に視線を向けると、ニコさんは慌てて首を横に振り否定します。

 なら一体誰が……ってそんな場合じゃないですね。天井が降りてきます!

 急いで逃げますよ! このままだと天井に押し潰されてぺしゃんこです!


 数分後……どうにか罠から脱出できました。

 はぁ……でも、どうして罠が急に起動したんでしょう?

 けれど、そんなことを考えていると、またあの羽音が聞えてきます。

 そして、再び通路に響く罠の起動音……中央へ動き始める左右の壁。

 もう! また罠が勝手に動き始めました! 逃げますよ、駆け足です!


 それから暫く走り続け、なんとか罠の範囲外へ。

 うぅ……流石に疲れました。もう動けません……ヘトヘトです。

 そうして通路に座り込んで休んでいると、聞えてくる不吉な羽音。

 けれど、その音の主は周囲を見渡してもどこにもいません……。


 なにかが近くにいるはずなんです……なのに見えないなんて……。

 そこまで考え、ハッとなります……私の右目なら見えるかもしれません!

 デュラハンの姿隠しの魔術すら見破りましたからね……試す価値はあります。


 そうして右目の眼帯を外し、周囲をもう一度見渡すと……いました!

 私達の最後尾! 背中に翼を生やしたゴブリンのような真っ黒い魔物が!

 ……なるほど。悪戯好きの低級悪魔・インプに狙われていたんですね。

 道理で目に見えないはずです……姿隠しはインプの得意魔術ですから。

 

 ふふっ……けど、ニヤニヤと笑っていられるのも今の内ですよ、インプ。

 もう私には見えているんですから……ニコさん製の聖水をくらうのです!

 インプが再び罠を起動させようと私達から目を話した瞬間、聖水を投擲。

 聖水を背後から浴びたインプは叫びながら床に落ち、その場でのたうちます。

 

 姿隠しの魔術を維持することもできず、全員の目の前に姿を現すインプ。

 すると、これは私の獲物だね……、と指を鳴らしながら呟くサマラさん。

 確かに悪魔は神官の宿敵ですが……どうしてそんなに嬉しそうなんです!?


 その後、インプはサマラさんにボコボコ……いえ、討伐されました。

 憐れインプ……さて、それでは第五階層を目指して進みましょう!


 今日の収支

 (インプの各種素材)

 ――――――――

 残金:金貨13枚、銀貨38枚、銅貨34枚


 (ノ_-;)ハア 早く先へ進みたいのに……。

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