178日目:炎を身に纏う蜥蜴。

 神聖歴六一〇二年・時雨鶏しぐれどりの月第八日・天気:曇/雨


 昨日は火蜥蜴の生息地近くで野宿をしました。場所は王都東の岩場。

 朝食を終えたら早速、火蜥蜴探しに向かいます。


 うぅ……やっぱり岩場は歩き難いです。

 加えて周囲には見上げるほどの大きな岩も多く見通しは最悪。

 これは慎重に進んだ方が良さそうです。


 そんなことを考えながら暫く歩いていると、ポツポツと雨が降り始めました。

 今朝から怪しい雲行きでしたけど……まさか本降りになりませんよね?

 しかし、不安は的中。雨足は衰えるどころか強くなる一方です。

 雨で岩は滑りやすくなり足元の状況は悪化。ついでに視界不良のおまけ付き。

 この状況は割と最悪な部類です……今回は諦めて引き返しましょうか。


 なんて悩みながら進んでいると、突然目の前が真っ白になります。

 霧!? でもこの大雨の中で霧だなんて!?

 困惑しているとジューッという音が雨音に紛れて聞こえてきます。

 その妙な音を追って霧の中心へ目を凝らすと、蠢く黒と赤の斑な影!

 ノアさん! 風でこの霧を散らしてください! ただ霧じゃないのです!


 直後、突風が吹き抜け周囲に立ち込めた霧を瞬く間に消し去ります。

 ……視界が晴れた先に現れたのは、身体の所々に火を燻らせる黒い大蜥蜴。

 体長六メートルを超える特大サイズの火蜥蜴・サラマンダーです!

 あの霧は正体。それは火蜥蜴の身体に触れた雨が蒸発した水蒸気たったんです。


 ……ふふっ、でもこの雨は恵みの雨でしたね。

 あれだけ火が弱まった火蜥蜴なら楽に狩れそうです。

 そう思い剣を抜いた瞬間、火蜥蜴は咆哮しその身に炎を纏います。

 熱ッ! え、嘘……もしかして火が弱まってたのは休んでたからですか?

 無理! 無理、無理、無理! これは無理ですよ!

 こんな相手に剣で挑むとか自殺行為です! ここは撤退! 撤退を!


 とか思っていると火蜥蜴の前に進み出るノアさんとニコさん。

 えぇ!? ちょっと! なんで二人ともやる気なんですか!?

 たまには本気で暴れたいし? ってノアさん!?

 火蜥蜴の素材は絶対手に入れますってニコさん!?

 あぁ、もう分かりました! 戦いますよ! でも私は囮しかできませんよ!?

 そう投げやりに叫ぶと、それで十分、という返事が……。

 くっ……最高の囮役になってやろうじゃないですか!


 そうして私と火蜥蜴の壮絶な追いかけっこが始まりました。

 逃げる私を追う火蜥蜴、それを攻撃するノアさん達。

 火蜥蜴の目標が彼女達に変わるたびに、私はその鼻先で剣を振り注意を引きます。

 炎に焼かれるか否かのギリギリのライン……まるで生きた心地がしません。

 あぁ、盾役をできる仲間が欲しい。いっそルルちゃんをそっち方向に育てますか。

 

 なんて良からぬ事を考え囮になり続けること約一時間。

 ようやく火蜥蜴はその身体から炎を消し、大地に倒れ込みます。

 な、長かった……喉はからからで足は棒みたいです。もう走れません。


 ……こうしてどうにか火蜥蜴狩りは終了したのでした。

 はぁ……私も剣以外の武器を考えましょうかね。



 今日の収支

 火蜥蜴の各種素材

 ――――――――

 残金:銀貨68枚、銅貨53枚

     猫銀銭190枚

 借金残高:金貨17枚、銀貨76枚


 (_ _;)パタリ もう動けません……。

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