155日目:捨てられないもの。
神聖歴六一〇二年・
さて、今日は王都へ行くための準備をする予定です。
旅に必要な道具類の買い出しはノアさんとニコさんに任せました。
無駄遣いしないように注意しましたけど……大丈夫ですかね?
ニコさんが張り切っていたのが非常に不安です。
私は冒険者ギルドへ向かい街を出る挨拶のついでに王都の情報収集を行います。
ギルドに着いたら、受付の筋肉お兄さんに数日中に街を出ることを伝えます。
ふらっと旅立つ冒険者も多いですけど、こういうのは意外と大切なんですよ?
話しを終えると、次の冒険も頑張ってくださいね、と励ましてくれるお兄さん。
お世話になりました。またいつか戻ってきた時はよろしくお願いします。
受付でそんなやり取りをしていると、突然誰かが背後から抱き付いてきました。
驚いて振り返ると、そこにいたのは妙にぼんやりとした様子のミアさん。
本当に街を出るのかにゃ~って貴女酔ってますね!? お酒臭いですよ!?
あの場で騒ぐのも迷惑になるので、とりあえず酒場に移動しました。
酒場に着くとおぼつかない足取りで隅のテーブルに向かうミアさん。
そこには食べかけの料理のほかに、沢山の酒瓶が転がっていました。
ちょっ……ミアさん一体いつから飲んでたんですか……。
あまりの惨状に呆然としていると、付き合うにゃ! と酒瓶を渡されます。
うっ……の、飲みますよ……だから、そんな据わった目で睨まないでください!
仕方なく口を付けると、ミアさんも手に取った酒瓶をぐびぐびと飲み始めます。
あぁ……あんなに飲んで……絶対体に悪いですよ……。
心配していると、ミアさんは飲みながらポツポツと喋り始めます。
どうやら、ミアさんは私たちがずっと街にいると思っていたみたいです。
船も新しくしたし、これからも一緒に冒険できると楽しみにしてたにゃーと。
この街は嫌いかにゃ? ここを拠点にしてもいいじゃにゃいか! 酒瓶を片手にそう言うミアさんは今にも泣きだしそうでした。
困りましたね……というか、それなら一緒に王都へ行きましょうよ?
しかし、そう誘うと、私は代々この街の漁師だし、捨てられないものも色々あるのにゃー、と耳をしおしおと倒してテーブルに突っ伏してしまいます。
確かに冒険者だからといって今までの生活や地位、人間関係などを投げ捨てて生まれ育った街を飛び出すのは容易なことじゃないですよね……。
それを簡単にできてしまった私やノアさん、ニコさんが異常なんです……。
……これは私たちが解決できる類の問題じゃないですね。
結局決めるのはミアさん自身ですし……自分で決断しないとあとで絶対後悔します。
私たちにできることは、彼女がどんな答えを出してもそれを受け止めることぐらいです。
そんなことを考えながら、私は再び酒瓶に口を付けます。
うん、今日は潰れるまで一緒に飲みましょう。
今日の収支
銀貨:-3枚(宿泊費×4+ソシオ)(寝床○、食事☆)
-35枚(食用、日用品など)
-15枚(酒代)
――――――――
残金:金貨1枚、銀貨43枚、銅貨21枚
猫銀銭190枚
借金残高:金貨18枚、銀貨26枚
(o_ _) のむ……のむです。
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