148日目:私たちは無関係です!

 神聖歴六一〇二年・夜長猿よながざるの月第八日・天気:晴


 あわわ……朝になったのにまだ港が騒がしいです……。

 ……実は昨日から港は大混乱に陥っています。

 理由は突如として現れた原因不明のお魚の大群……。

 そのせいで船を動かせず様々な作業が滞っているんです。

 

 え? 例のお薬が原因じゃないのかって? ……な、なんのことでしょう?

 あのあと錬金術師ギルドが調査して原因不明と結論を出したんです。

 私たちが試験したお薬は無関係。いいですね? ですよ?

 ……錬金術師ギルドの薬品試験依頼は今後受けません。……えぇ、絶対です。


 暗い気持ちのまま朝食を終え、ノアさんと冒険者ギルドへ向かいます。

 ニコさんとミアさんは今日のお仕事はお休みです。

 部屋に籠って釣竿の試作第二号を作るんだとか……もう時間がありませんからね。


 ギルドに着いたら早速依頼を探します。

 久々にノアさんと二人きりのお仕事ですが……なにをしましょう?

 悩んでいると、ふとそれが目に入りました。港でのお魚の捕獲依頼です。

 うわぁ……あのお魚の大群を人力で処理してるんですか!?

 ……これはお手伝いしないといけませんよねぇ。


 というわけで、受付で依頼を申請します。担当はいつもの筋肉お兄さん。

 普段通りの対応で、昨日の依頼を話題に出さないのは流石ギルド職員です。

 例の薬品試験依頼が港での騒ぎに関係しているのは薄々気付いているでしょうに……。

 あぁ……大人の世界って本当、闇ばかりです……。


 憂鬱な思いを抱えたまま港に向かうと、すでに大勢の人が作業をしていました。

 私たちも先に作業をしていた漁師さんと協力しながら投網などでお魚を捕獲します。

 働きながら会話をしていると、このお魚の大群には貿易船の水夫さん達だけでなく、実は漁師さん達も困っているそうです。


 あれ? でも漁師さん達は近くでこんなにお魚が獲れたら嬉しいんじゃないんですか?

 そう尋ねると、肩を竦ませる漁師さん達。

 なんでも獲れるお魚は小魚、いわゆる雑魚ばかりで売り物にならないそうです。

 だから獲っても、獲っても金にはならないと苦笑いされました……。


 そうして陽が傾き始めた頃、ようやく作業が終わりました。

 海面を埋め尽くすほどいた魚の群れも今はまばらです。

 これなら船も出入りできると皆さん笑顔で喜びあっています。

 けど、港の一角にできた巨大なお魚の山はどうするんでしょう?

 まさかあの量を捨てたりしませんよね?

 尋ねてみると、保管しておいて少しずつ漁の撒き餌に使うそうです。

 流石にこの量を捨てるのは手間だし勿体無いと……ふぅ、一安心です。


 例のお薬はですがこれだけのお魚が無駄になるのは悲しいですからね!

 ……なんですかノアさん、そのなにか言いたげな目は!

 もう! それより早く宿へ帰りますよ!

 今更ですがあの二人のことが心配になってきました!

 なにも起こってないといいんですけど……。



 今日の収支

 銀貨: -2枚(宿泊費×3+ソシオ)(寝床◎、食事◎)

      +5枚(依頼報酬)

――――――――

 残金:金貨4枚、銅貨21枚

    猫銀銭190枚

 借金残高:金貨19枚、銀貨26枚


 (*'-'*) 港が回復して良かったです。えぇ、本当!

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