147日目:性能試験です!

 神聖歴六一〇二年・夜長猿よながざるの月第七日・天気:曇


 ……二日続けて高級宿に泊まってしまいました。

 うぅ……節約するって決めたのに……。


 色々後悔しながら朝食を終え、お仕事探しにギルドへ向かいます。

 予定通り釣竿の試験はしますが、ついでに簡単な依頼も受けておきたいなと……。

 少しでもお金を稼ぎたいですからね。


 ギルドに着いたら早速クエストボードの前へ。

 港で釣りをしながらこなせる依頼は……あれ? このお仕事……。

 依頼主は錬金術師ギルド、依頼内容は薬品試験って……。

 これは……まさか、ニコさんが作ったお薬の改良版の試験じゃないですよね?

 ……う~ん、少し不安ですけど、報酬もいいし受けましょう!


 しかし、受付で筋肉お兄さんに渡されたお薬は予想通りのモノでした……。

 お薬の正体を知った瞬間、表情を引き攣らせるミアさん。

 これダメにゃ! 絶対ダメにゃ! ってすみません、我慢してください。

 断るにはちょっと惜しい報酬金額なんですよ……。

 

 その後、涙目で嫌がるミアさんをどうにか説得し依頼を受注しました。

 でも、ニコさんのオリジナルからどれだけ使いやすくなってるんでしょう?

 小瓶に入った液体の色は、澄んだ琥珀色と随分薄くなった気がしますけど……。

 うん、とりあえず説明された通りに使ってみましょう。

 ……元からそういうお仕事ですしね。

 

 というわけで、港の端にある釣りポイントへやってきました。

 大会当日も使用される場所なので、釣竿の試験にはバッチリです。

 さて、釣竿はミアさんに任せて私はお薬のテストをしないと……。


 蓋を開け、お薬を慎重に海面へ一滴落としてみます……特に変化はなし。

 あ、そういえば臭いは劇的に改善されています。ほぼ無臭に近いです。

 これならミアさんの時みたいな事故は起きないかもですね……。


 そうやって淡々と作業する私の様子を心配そうに見つめてくるミアさん。

 もう、なにかあっても大丈夫ですって、ここ陸地なんですから!

 ミアさんの心配性に苦笑しながらお薬の試験を続けます。

 と言っても、変化があるまで同じことを繰り返す単純な作業なんですけどね。


 そうして油断していると、変化は一瞬でやってきました。

 遠くから物凄い数の魚たちがこの場所に押し寄せてきます!

 ひっ! こ、この数はダメじゃないですかね!?

 その多さに恐怖していると、だから止めようって言ったにゃ! とミアさん。

 って、ミアさん! なんか引いてますよ!?


 声をかけた瞬間、一気にしなる釣竿。

 折れないのが不思議なぐらいの曲がり方です!

 慌てて支えるのを手伝おうとしますが……ボキリッ。

 あ……やっぱり折れました!

 にゃぁぁぁぁぁぁ!? というミアさんの悲痛な叫び声が港に木霊します。


 よ、よし、撤収! 撤収です! お魚の大群が到達する前に逃げますよ!

 釣竿はまた作り直しましょう!


 ……こうして釣竿試作一号は無残な結果となったのでした。


 今日の収支

 銀貨: -2枚(宿泊費×3+ソシオ)(寝床◎、食事◎)

     +10枚(依頼報酬)

――――――――

 残金:金貨3枚、銀貨97枚、銅貨21枚

    猫銀銭190枚

 借金残高:金貨19枚、銀貨26枚


 (ノ_-;)ハア…あのお薬はやっぱり欠陥品です。

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