144話目:ゆらゆら揺れます!
神聖歴六一〇二年・
ゆ~れ~る~! 船が揺れます~!
あぁ、ダメ……気持ち悪くて吐きそうです。
現在、冒険者ギルド船トルメンタ号は港を少し離れた沖合で嵐に襲われています。
うぅ……錨を降ろしてあとはそれを中心に波風を凌ぐだけって聞いてたのに……。
クラーケン討伐時よりも辛いとか想定外です……うぅ……涙が出そうです。
でも、これだけ揺れても港の岸壁に係留するよりは安全なんだそうです。
ギルド船ほど巨大な船だと波によっては岸壁を壊してしまうこともあるんだとか。
だから、船も港も傷付かないように沖で停泊するんですね……。
はぁ……でも本当に酷い揺れです。……まさか沈んだりしませんよね?
船が荒波で大きく揺れるたびに、そんな不安に襲われます。
そうした状況だというのに一人元気なのはミアさんです。
先程から、ニコニコ笑ってお酒なんか飲んでいます。
彼女の周りには私たちと同じようにギルド船から降りそこねた冒険者が数人。
嵐の海ってワクワクするにゃーってミアさん……。
なんでしょう? 海育ちの人からするとこの嵐はまだまだ普通なんでしょうか?
そんなことを考えていると、ギルドホールにずぶ濡れのノアさんが入ってきました。
!? どうしたんですか? 大丈夫ですか!?
慌てて駆け寄り乾いた布を渡すと、疲れ果てた表情をこちらに向けてきます。
そして、あんな場所で結界を張らせるとかあり得ない……と呟くノアさん。
魔術が使えるので守護結界を張るお仕事を頼まれたのは知ってましたけど……。
……予想以上に過酷な現場だったみたいです。
よし、元気が出るようノアさんに暖かいお茶を淹れてあげましょう。
……それにしてもこの嵐はいつまで続くんでしょう?
流石にそろそろ気持ち悪さが限界を超えそうです。
顔を青褪めさせて机に突っ伏す私の様子になにを感じたか、嬉しそうな笑みを浮かべて近付いてくるニコさん。
その手には青い液体の入った小瓶が……。
あ、これはアレです、いつものパターンです!
私を新しいお薬の実験台にするつもりですよね!?
思わず身構えていると案の定、飲みますか? と尋ねてくるニコさん。
飲めばスッキリ爽快、朝まで元気! ってなんですかその怪しげな謳い文句は!?
ぜ、絶対、絶対飲みませんからね!?
断ると残念そうな表情を浮かべながら、その場に小瓶を置いて去っていきます。
放置された小瓶を訝しげに見つめていると、少し離れた場所でニコさんが私の様子をチラチラと窺っているのに気が付きました。
彼女、わざと残していきましたね……くっ……誘惑には負けません!
夜、ギルドの職員さんが簡単な食事を振る舞ってくれました。
干し肉にパン、焼き魚と果物が少々。
食欲はほとんどありませんが、果物だけでも食べておきます。
なにも食べないのは体に毒ですからね……。
さて、夕食も終わったので用意された寝床へ行きましょう。
朝になったら嵐が過ぎ去ってるといいですねぇ……本当。
今日の収支
特になし
――――――――
残金:金貨3枚、銀貨52枚、銅貨21枚
猫銀銭190枚
借金残高:金貨19枚、銀貨76枚
(_ _;)…パタリ 今日は早めに寝るのです。
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