135日目:ミアさんの船。

 神聖歴六一〇二年・月見羊つきみひつじの月第二六日・天気:晴


 朝、目が覚めたら宿の庭で軽い運動をして体の調子を確かめます。

 ……うん、これならいつも通りの依頼をこなせそうです。

 ニコさんのお薬を飲んで完全に体調が戻るまでに約二日……。

 ……やはり多用していいものじゃないみたいです。

 できる限り使う状況に陥らないように普段から気を付けないと……。


 改めてお薬の危険性を確認し、ノアさん達と朝ご飯に向かいます。

 ここ数日、超高級な宿に泊まっているので食事が毎回楽しみです。

 む、無駄遣いなんかじゃありません! 英気を養っているんです!!


 朝食を終えたら、冒険者ギルドへ。

 今日もしっかり稼いで早く船の修理費用を貯めないと……って、アレ?

 そういえばミアさんの船の修理費用っていくら必要なんでしょう?

 

 ミアさんと一緒に働きだしてからもう十日ほど経ちます。

 その間、報酬の九割を渡しているのでかなりの額が貯まっているはずです。

 ……船の修理費用ってそんなに高額なんでしょうか?

 これはちょっと訊いてみる必要がありますね……。


 ギルドに着いたら、先に来て待っていたミアさんに早速尋ねます。

 すると、気付いちゃったかにゃ~、と苦笑する彼女。

 ……えっと、つまりどういうことです?

 困惑していると、見たほうが早いにゃ、ということなのでギルドの外へ。

 

 ミアさんの案内で暫く歩いていると、港の端にある船渠せんきょに辿り着きます。

 船渠は船を建造、修理、係留などしておく施設です。

 その中でもここはマーガの街で最大規模だとミアさんが教えてくれます。

 

 普段見ることのない作業に目を奪われていると、着いたにゃ、とミアさん。

 彼女の指差す方向には一隻の船が……ってちょっと待ってください?

 ……なんであの船は骨組みなんでしょう?

 あれではまるで修理というより新造しているみたいです……。


 説明を求めてミアさんへ視線を向けると、現在建造中にゃ、と笑う彼女。

 ……え? いやいや、修理って話でしたよね!? どういうことです!?

 思わず詰め寄ると、焦った様子で言い訳を始めるミアさん。

 修理より新造するほうが安かったって絶対嘘ですよね!? 騙されませんよ!?

 でも、きっといい船になるにゃ! ってそういう問題ではないのです!!

 

 まったく……なんで最初に説明してくれないんでしょう……。

 新造船でもちゃんと協力するのに……それで? あといくら足りないんです?

 私の言葉に目を丸めるミアさん。怒ってないのかにゃ? って貴女は……。

 正直いい気持ちではありませんが乗りかかった船です。最後まで手伝います。

 そう伝えると、ありがとにゃー、と抱きついてくるミアさん。


 はぁ……私ってなんでこう厄介な子に懐かれますかね。

 ノアさんに視線を向けると、呆れたように肩を竦められます。


 とりあえず、稼げる依頼を受注してお仕事を頑張りましょう。

 ……街を出るのはもう少し先になりそうですね。


 今日の収支

 銀貨:+1枚(依頼報酬)(ミアさんへの支払い差引済)

     -4枚(宿泊費×3+ソシオ)(寝床☆、食事☆)

 ――――――――

 残金:金貨3枚、銀貨74枚、銅貨21枚

     猫銀銭190枚


(ノ_-;)ハア…予想外の事態です……。

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