117日目:休日の決意。

 神聖歴六一〇二年・月見羊つきみひつじの月第八日・天気:晴

 

 はぁ……憂鬱です……最悪です。

 元気を出そうと超高級宿に泊まったのに、ちっとも楽しくありませんでした。

 大海魔クラ―ケンの討伐……絶対無理ですよ。逃げ出したいです。


 因みに今日のお仕事はありません。

 理由は強制指名依頼を受けると行動が著しく制限されるからです。

 街の外へ行けないため、ほぼ全ての依頼が受注できません……。

 ……休日は欲しかったけど、こんな形で休みたくなかったです。


 部屋にいると気が滅入ることばかり考えてしまいます。

 よし、外に出ましょう! そういえば街の探索もしていませんでしたし。

 ノアさんとニコさんを誘って街でお買い物とか楽しむんです!


 というわけで宿を出て、皆で街の中心部へやってきました。

 様々な市場や商店が軒を連ねるマーガの街最大の商業地区です。

 今日はパーッとお金を使いましょう……これが最後の機会かもしれませんしね。


 色々な物を買いました。

 ニコさんの欲しがるお薬の素材や機材。

 以前から読みたかった本。

 マーガの街へ来る前に買おうと思っていた服。

 あとは普段は高くて手を出さない甘いお菓子。

 

 それだけ派手に使ったのにお金はあまり減っていません。

 なぜかどの店でも表示価格よりかなり安く売ってくれるんです。

 そして店を出る時には決まって店員さんが、頑張れ! と励ましてくれます。

 これは別に私たちに限った事ではありません。

 商業地区の全ての冒険者が同じようにサービスされています。

 ……まるでクラ―ケン討伐を応援されているみたいです。


 でも、きっとその通りなのでしょう。

 生きた災害といわれるあれを放置すれば被害は他の自然災害の比ではありません。

 それこそ下手をすれば長期間、街の機能は麻痺するはずです。

 だから街の人たちは冒険者に優しいんです。

 今、頼りになるのは私たち冒険者だけだから……。

 

 ……なぜでしょうね。

 今朝は逃げ出したい気持ちでいっぱいだったのに、今は少し頑張ろうと思えます。

 街の人たちと関わって、優しくされ、励まされ、応援された……ただそれだけなのに……彼らの笑顔を守りたい、そんな気持ちになります……我ながら呆れますね。

 けど、人間ってきっとそうしたものですよね……ほんの小さなことで誰かを助けたいと思ってしまうんです。

 

 うん……頑張りましょう!

 そう決意してノアさん達へ目を向けると、二人とも笑って頷いてくれました。

 やれるだけやってやります! 打倒、大海魔クラ―ケンです!


 ……そうと決まればノアさん、ニコさん! 水着! 水着も買いに行きましょう!

 今の内に安く購入して、討伐後は絶対に海水浴へ行くんですからね!!


 私たちの買い物はまだまだ続きます。

 でも、それは最初とは違い明日への希望を持った買い物です。

 未来への夢を描くための買い物です。



 今日の収支

 銀貨:-40枚(ニコさんの素材と機材)

    -30枚(服など)

    -10枚(書籍代)

    -30枚(水着×3)

    -10枚(お菓子代)

    -32枚(宿泊費×3+ソシオ)(食事☆☆、寝床☆☆)

 ――――――――

 残金:金貨1枚、銀貨14枚、銅貨93枚

    猫銀銭190


('-'*) 絶対、生きて帰ってくるんです!

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